第145話 仲間のピンチ

文字数 1,252文字





 金属板から落下し、途中の鉄骨にぶつかった俺だったが……






 両腕の力を支えに渾身(こんしん)の力をふるって、骨組みの上によじ登った。



ふぅ……




 どうにか落下の危機からは脱したものの――



イテテ!

両腕の(すじ)がつっぱっちまった……!




 おそらく痛みは、一時的な症状にすぎない。

 けれども、こんな状態で足場の狭い道を跳んだり渡ったりするのは、無謀(むぼう)でしかない。



 世間じゃ「猫の命は9つある」とか、「何度死んでも平気だ」などといわれてるらしいが……



 俺の知る限り、猫だって命は1つきりだ。迂闊(うかつ)なことはできねぇ。



痛みが引くまでは、上の階に移動するのは諦めるしかねぇか




 仲間たちのいる金属板は、この鉄骨よりも高い位置にある。体が万全な状態でも、一気に跳び乗るのは至難(しなん)(わざ)だ。



 けれども幸いなことに、鉄骨は金属板のほうへ傾斜(けいしゃ)している。



 ただし道は繋がってないし、高低差もエグイから、この鉄骨をつたって金属板へ渡るのは厳しい……。



まずは徒歩で近づくか




 ゆっくりと慎重に、細い坂道を進んでいく。



おっ




 先へ進んでいくにつれて、骨組みの隙間から上にいる仲間たちの様子が見られるようになった。



 インテリvsトウ。



 ミミ&ヨウvsリャク。



 ねこねこファイアー組の幹部を相手に、みんなは激戦を繰り広げている。







 その背後に忍び寄る脅威(きょうい)



 インテリの後方に、(くれない)が迫っていた。



インテリ! 後ろだ!



はっ!




 紅へ注意を向けるインテリ。



 だが視線が対戦者のトウから()れた瞬間、次なる危機が到来する。



 チャンスとばかりに、トウがジャンプアタックを仕掛けた。



トゥリャアアアアアッ!



()りないヤツめ!




 インテリは体を反転させつつ、バックステップする。



チッ!




 直後、トウの拳が虚しく宙を(すべ)る。



 インテリは寸分(たが)わず攻撃の間合いを見切って、巧みに回避していた。



貴様の攻撃など喰らうかっ




 ドンッと着地し、インテリはさらなる攻撃に備えて身構える。



 対戦相手がひとりだけなら、そこで睨み合いを続けてもなんら問題はなかった。



 だが――



 インテリの背後からは、闇を暗躍する強者が迫っている。



――!




 宙を舞う紅。

 


 すでに紅は、大きな体を飛躍させて空中へ跳び上がっていた。



しまった!




 インテリが反応に遅れるのも無理はねぇ。



 紅は気配を絶ってインテリの視界から消え、足音も感じさせずに動いていた。



 トウの攻撃をかわすインテリの隙を突いて、暗闇に広がる炎のようにいつの間にか迫っていたのだ。



背後を取られた者に勝利はない!




 標的の頭上へ、紅が降りかかる。



 まさに絶体絶命!

 勝つか負けるかの瀬戸際(せとぎわ)



 そしてついに――



 インテリの急所の首根に、紅の牙が襲いかかった。



インテリーーーッ!



うぐぁああああああっ!




 木霊(こだま)する悲鳴。



 インテリは苦痛に()け反り、相手を振り払おうと必死にもがいた。


 











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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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