第110話 奮戦

文字数 1,045文字





ヤァァァァァァッ!




 気合いを込めた一撃。



 ヨウの手が紅の脇腹を打つ。



貴様ぁ! 

横から邪魔立てする気か!



早くボスから離れてクダサイ!




 言いながらヨウは闇雲に拳を叩きこむ。



無理するな、ヨウ!



無理ではナイノデス!




 ペシペシペシペシッ!




 紅に襲いかかる猫パンチの連打。



 狙いは正確だ。すべて確実に紅の脇腹を打っている。



 だが肝心の威力となると――



 腰が引けちまって、お遊びレベルの猫パンチにしかなってねぇ。







ヨウ! もう充分だ!

危ねぇからオメェは下がってろ



ワカリマシタ!




 ヨウが紅から離れる。



 紅の注意がいくらかヨウに向いているうちに俺は噛みつき攻撃を仕掛けた。



隙を作ったら終わりだぁ!



うぐっ……!




 左肩を噛みつかれて、紅が呻く。



さらにパンチも浴びせてやるぜ!



喰らうかっ!




 紅は首をひねって攻撃をかわす。



 それでいて俺の拳をよけながらも猫キックをかましてくる。



チッ!




 紅の足の爪が俺の体をかすめる。が、ギリギリのところで攻撃をかわし、ダメージを避けた。



 短い取っ組み合いを経て、俺と紅は一定の距離を取りつつ対峙する。



こんな争いに自分の子どもまで巻き込むとは、とんでもねぇ父親オヤジだな


ガキが大事なら、巣の中にでも隠しとけよ



戦いへの参加は、あの子たちの意思によるもの


我が妻の子たちは志が高いのだ!

貴様のような俗物には到底理解できんだろうがな!



まったく理解に苦しむぜ。

そこまでガキどもを追いつめるほど飢えさせるって、明らかに親失格だろ



だまれっ!

貴様の縄張りさえ奪い取れば問題はすべて解決するのだ!



解決しねぇよ。

その短絡思考がコイツらにまでうつっちまってるほうが問題だと思うぜ



……


……




 メデアとイソルダは言い争う俺たちを無言で見つめている。



世迷言をほざくなっ!

問題の根源は貴様だ、プルート!


必ず貴様を倒し、ジロリ組の縄張りを我らの物にしてくれる!




 紅は顔に迫力をみなぎらせて恫喝した。



 けれども、子どもたちにはトゲのない口調で指示をおくる。



メデア、イソルダ。

おまえたちはここから出て、引き続きイザベラの作戦に従って行動してくれ



じゃあ、アレを……?



そうだ。

プランBを遂行するのだ



……わかった



……了解、ニャウ



プランB?



Umm(ウーム)、謎デスネ



おいっ、なんだよプランBって!?


さては、また何かよからぬことを企んでるな?



フン、貴様に教えるわけなかろう!


仮に答えがわかったところで、貴様らに対処できるとは思えんがな!





 紅はまるで勝利を確信したようにほくそ笑んだ。



























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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