第110話 奮戦
文字数 1,045文字
気合いを込めた一撃。
ヨウの手が紅の脇腹を打つ。
言いながらヨウは闇雲に拳を叩きこむ。
ペシペシペシペシッ!
紅に襲いかかる猫パンチの連打。
狙いは正確だ。すべて確実に紅の脇腹を打っている。
だが肝心の威力となると――
腰が引けちまって、お遊びレベルの猫パンチにしかなってねぇ。
ヨウが紅から離れる。
紅の注意がいくらかヨウに向いているうちに俺は噛みつき攻撃を仕掛けた。
左肩を噛みつかれて、紅が呻く。
紅は首をひねって攻撃をかわす。
それでいて俺の拳をよけながらも猫キックをかましてくる。
紅の足の爪が俺の体をかすめる。が、ギリギリのところで攻撃をかわし、ダメージを避けた。
短い取っ組み合いを経て、俺と紅は一定の距離を取りつつ対峙する。
メデアとイソルダは言い争う俺たちを無言で見つめている。
紅は顔に迫力をみなぎらせて恫喝した。
けれども、子どもたちにはトゲのない口調で指示をおくる。
紅はまるで勝利を確信したようにほくそ笑んだ。
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