第133話 対決
文字数 1,718文字
兄と弟――
兄弟猫による戦いの火蓋が切られようとしていた。
それまで様子を見ていた紅が偵察猫に指示を出す。
紅と同じように
上にいる猫たちの戦いが再開される前に、偵察猫が動きだした。
偵察猫がガラクタの床を蹴る。
華麗ともいえる跳躍で空を切っていく。
着地早々、テンダを襲うのは拳の嵐。
数秒のあいだに、十数回ものパンチが繰り出される。
感情的だが、狙いは的確だ。
刺せば貫く錐のような、死の危険を秘めた攻撃の数々がテンダに降りかかる。
足を負傷しているテンダには、とてもかわしきれない……!
偵察猫は
テンダは弾みをつけて後ろへ跳び
片腕を振って反撃に乗りだす。
バシバシバシバシバシッ!
激しくぶつかり合う拳。
互いの攻撃を拳で受ける、もしくは弾く、両者一歩も譲らない苛烈な攻防戦。
スピードはほぼ互角だが、力はテンダのほうが上回っている。
偵察猫は、その力を怨恨パワーで補って奮闘している状態だ。
偵察猫は構えると、両手をテンダの顔に近づけた。
手のひらを宙を漕ぐように振りはじめる。
ババババババッ!
テンダの顔の前で、何度も何度も手のひらを上下させる。
スピードが速く、激しい。
両眼をじっと据えて観察しても、動作のすべてを捉えきるのは容易じゃない。
つぶやいた直後、偵察猫はテンダに向けて片手をバッと突き出した。
偵察猫の必殺技がテンダに肉薄する。
切れ味の鋭そうな攻撃だ。
だがテンダも歴戦の勇者。
負傷した足をその場に留めたまま、ひねりを加えて後ろへ上半身を傾ける。
二足立ちのまま、体がクニャッとツイスト状態で折れ曲がる。
上体を反ることで、正面から迫る相手の拳を器用にかわした。
偵察猫の言葉どおり、テンダは上体を反ることで、正面から迫る相手の拳を器用にかわした。
攻撃を回避され、今度は偵察猫のほうに隙が生じる。
だが――
テンダは偵察猫に攻撃を仕掛けなかった。
それどころか体勢を戻すと、相手をじっと見下ろして語りかける。
偵察猫は焦りの色を浮かべてその場に固まった。
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