第91話 暴走猫
文字数 1,345文字
唐突に放たれた拳。
喰らったらふっ飛ばされるしかないその一撃を、転倒覚悟でどうにか後ろへ跳んで、スレスレのところでかわす。
直後、ワイの代わりに打たれた青草の葉先が引きちぎられて宙に舞った。
仲間、という言葉に打たれたんやろか。
そんなら、ジロリ組の
お、効いとる効いとる。
もういっちょ、ダメ押ししとこか。
そもそもあのヤミミンは長女なんか?
どーせそんなん知らへん状態で惑わされたんやろ。
ワイの指摘を無視して副ボスがこの場を去ろうと歩み出すと――
ヤミミンが動いた。
ヤミミンは副ボスの後ろから、自分の前足の毛をふーっと宙に吹き飛ばす。
数本の抜け毛が風に流れて、真正面におる副ボスのもとへ運ばれていく。
副ボスが動くよりも、ヤミミンの毛が絡むほうが早かった。
ヤミミンのニオイつきの毛が副ボスの鼻腔を刺激して、意のままに操ろうとする。
得意顔のヤミミンは、サッと体勢を変えた。
何をかます気か、ワテらのほうへ尻を向けてくる。
高々とつき出されたおしり。
シッポをツンと立て、無防備にさらされた丸出しの
しかも動くものに目がない猫の習性を利用し、伸ばしたシッポをフリフリさせとる。
究極というだけあって、四つん這いのポーズの威力は絶大やった。
副ボスの視線は、あっちゅうまに釘づけになってもうた。
副ボスがワイのほうへ向き直りつつ
ギロリと血走った眼。むき出しの闘争心。
暗闇で生肉
どうにもならへん状況に追いこまれて、ワイは絶望するしかなかった……。
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