第70話 ボスの決意②

文字数 1,548文字





 太陽の隠れちまった時間帯は俺らにとっちゃ都合がいい。



 ハンターである野良猫おれたちは、夜間の活動に慣れている。他の生き物たちが寝静まったときこそ、狩りにおける最大のチャンスだ。



だがそれはねこねこファイアー組のヤツらも同じこと


いや、それ以上に夜の気配に溶け込んでいるのかもしれねぇ



ヤツらは闇の集会で我らを血祭りにするべく、趣向を凝らしてもてなそうとしているでしょう



だろうな




 そんな場所に俺たちが突っ込んだとして――



 果たしてみんなが無事でいられるだろうか?



 おそらく全員無傷ってわけにはいかねぇよな。



 だったら、敵地にのり込む数は少ないほうがいい……



ミミ、ヨウ。

オメェらホントに帰宅しなくて平気なのかよ



Ummうーん……。

平気ではないデスケド、組の一大事デスシネ



そうよぉ。

それにみんなで来いって言われたんだから、欠員は少ないほうがいいでしょ



まぁ、そうだが……




 俺は足を止め、後ろを歩む仲間たちのほうに振り返る。



途中まで来ていまさら何言ってんだって思うかもしれねぇけどよ、やっぱり廃工場には俺一人で行く


みんなはここで待機か、家があるヤツは帰ってくれ



ホンマですか!? 

親分さん!



ひとりで敵地に行くって、さすがにそれは無謀よぉ!



危ないことはしないほうがいいデス!




 みんなそろって足を止め、俺の一存を不安視するように見つめてくる。







 すると、後ろにいたインテリが俺のそばに寄り、密談モードに声をひそめて訴えてきた。



ボスの提案は、犠牲者を最小限に抑えるという意味では正しい判断かもしれません


ですがボスの身にもしものことがあれば、ジロリ町の平和は(またた)く間に崩れ去るでしょう



なら、どうしろってぇんだ?



戦えるメンバーだけ連れて、足手まといになりそうな者達は残していくべきかと



足手まとい……


新入りと、あのメス猫か



ええ




 あのふたりは、まだ幼い。



 インテリが足手まといと指摘するのも無理はねぇ。



だが、ふたりだけを残して大丈夫か? 

この辺りはねこねこファイアー組の縄張りに近いぞ



テンダの偵察猫レコねこと合流した際にでも、彼らの護衛を頼めばよろしいのでは?




 とはいえ合流するまでのあいだに万一のことがあったらと考えると、いささか不安ではある。



こんなときマウティスがいればなぁ



連絡用のハトを使って捜索させてますが、いっこうに行方が知れません。

同行した白モブニャンも、どこへ行ったのやら



ったく、アイツらなにやってんだか……



はっはっはっ。

ま、いねぇものは仕方ねぇっす


こんなときこそ、おおらかにいくっすよ



ム?

せっかく密談してんのに盗み聞きしてんじゃねーよ



おれの耳は並外れていいんすよ。

これでもできるだけ聞かないよう耳を伏せてたつもりっす




 自分の耳をピクピク動かしながら、副ボスのテンダはアピールする。



 まったくこれから敵地にのり込むってぇのに、無邪気なヤツだぜ。



けどテンダの言うとおりだな。

ピリついててもなんにもならねぇ


前言撤回して、俺ひとりで突っ込むのは止めにするぜ



そうこなくっちゃ♪



人間界でも、旅は道連れ世は情けといいますさかいに!



Oh~、道連れ! 

死なば諸共もろともってコトバも聞いたコトがアリマス



それはゆうたらアカンやつや



はっはっはっ。

ブラックジョークが効いててなかなかいいぞ



……不謹慎ですよ



まぁいいじゃねーか。

オメェらの身の安全は俺が命に代えても保証するからよ


さーて、じゃあみんな聞いてくれ。

いまから俺と一緒に同行するメンバーを発表するぞ



えっ!?


ど、同行するメンバーを発表って……!?




 驚く新入り。その顔に垣間見える、不安。



 きっと新入りもわかっているはずだ。戦いに不向きな自分が同行メンバーから外れるってことを――。



 すまねぇな、新入り。



 俺はオメェやみんなのために、ボスとして決断しなくちゃならねぇんだ……。








































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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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