第115話 チームプレー

文字数 1,249文字





 ミミvsリャク。



 攻防はますます激化している。





 

 両者の戦いは、殴り合いから毛を四方に散らしての取っ組み合いに発展した。



 床をバタンバタンと打って、何度も金属板の上を転がる。



 互いの体を押さえこんだところで、猫必殺の足技が飛び交った。



ウリャリャリャリャリャリャアッ!



ニャニャニャニャニャニャニャアッ!




 怒涛(どとう)の蹴り合い。



 両者、一歩も譲らない。



 ミミとリャクが互角の戦いを繰り広げていると――



 そこへそろーりそろーりとヨウが接近していく……。







気分を鎮めるためにちょっと毛づくろいを――


ペロン……ペロン……


ふぅ……



ふぅ……じゃねぇよ!

マイペースすぎるだろ



ソウデシタ!

ここはヒーローのように、勇気をみせるときナノデス……!




 ヨウは戸惑いながらもリャクの背後へまわり込む。



ちょっと噛みマスヨ



噛みますよって……そんな調子で大丈夫か?

無理して戦わなくてもいいんだぞ?



あんな温和な猫にリャクの相手ができるとは思えんがな



……敵ながらその意見には逆らいがたいぜ



では、噛ミマスネ!




 血を見るのが苦手なヨウは、まごつきながらもリャクの片腕にカプリと噛みついた。



あ?



エ……痛くナイデスカ?




 リャクは噛まれたところで焦りもしない。



 しかしヨウが二度三度と同じ行動を繰り返すと、さすがに(わずら)わしかったのか、



失せやがれっ! 




 羽虫を払うようにリャクは手を乱雑にふるう。



アウッ!




 たやすくはねのけられて、ヨウは後ろへ引っ込んだ。



 けれども運動神経は悪くないから、攻撃を受けてフラついたりはしてねぇ。



Umm(ウーン)、やっぱり攻撃って難しいデスネ~



ヨウ! 

そのフサフサのシッポをうまく使うのよ!



シッポ、デスカ?



それだけ長くてボリュームがあれば――




 ミミは、リャクの顔を指し示しすように片手を動かす。



ナルホド!




 ミミのアドバイスを受け、ヨウはリャクの頭側に回り込んだ。



 リャクの頭頂部に尻を向ける形で腰を下ろすと、おもむろに自身のシッポを振る。




 フワサァ~……




 しなやかな毛がさらりと流れて、相手を優雅に盲目の世界へといざなうかのようだ。



クッソ! ざけんな! 

前が見えねえっ! 


この毛むくじゃら野郎がっ!




 リャクは顔を左右に振って、視界を(さまた)げるものを退(しりぞ)けようとした。



 けれども両手はミミが押さえこんでいる。



 上に気を取られてリャクの足技がやんだスキに、ミミは相手の腹を両足で激しく蹴飛ばした。



ギャッ!




 鋭い爪が、リャクの腹部を裂く。



テメェ……!

よくもやってくれたなっ!



フン! 

チームプレーの力、思い知ったかしら?



Oh~!

アレがチームプレーだったのデスネ!



わかってなかったのかよ



なにがチームプレーだっ。

テメェらが束になってかかってこようがブチのめしてやるっ!




 ミミはぴょんと起き上がると、ヨウを庇うように前へ跳び移って仁王立ちになる。



思い上がるのもいい加減にしなっ!


たとえマタタビの力を借りたところで、アンタみたいな酔っ払いが勝てる見込みは、限りなくゼロに等しいんだからね!



























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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