第124話 自分との闘い
文字数 1,607文字
正体不明の存在が辺りからいなくなると――
ホッとする反面、今頃になって噛まれた首の痛みを強く感じるようになってきた。
猫は痛みに鈍感って世間では言われてるみたいだけど、ちっとも同意できない話だ。
だって、痛いものは痛いもん……。
痛みに耐える辛抱強い猫もいるだろうけど、ボクには無理だ。
目に涙は浮かんでくるし、いてもたってもいられなくて鳴き騒いでしまう。
誰も何も答えてくれない。
こんなとき、励ましてくれる誰かがいてくれたらいいのに……。
そもそも、なんでこんなことになっちゃったんだろう……?
妹が行方不明だから?
ねこねこファイアー組が邪悪だから?
それとも――
下々道さんのことを思い出すと、ちょっとイライラする気持ちが湧いてくる。
だけど、憎たらしいあの一家の顔はもうとっくに薄れてしまっていて、思い出すこともできない……。
そんなボクを捨てたかつての飼い主よりも、ずっと鮮明に思い浮かぶ相手がいた。
その相手は……ジロリ組のボス猫・プルートさんだ。
ボクに授けてくれた言葉……。
あのときボスは、ボクひとりをそばに呼んで語ってくれた。
あのときはイイ気分になって返事しちゃったけれど……
正直いうと、ボクはまだ自分のことが信じきれていなかった。
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