第98話 熾烈な戦い
文字数 1,084文字
紅との闘い。
コイツ、思ってたよりやりやがる。
追っては逃げられ、近づけば離れられ――それを繰り返しているうちにスタミナを消耗し、俺はバテちまった。
威勢よく言い返してみたものの、猫にとっちゃ持久力不足は死活問題だ。
だが、完全にスタミナが尽きたわけじゃねぇ。
少し休めば呼吸も安定し、元通りに動けるようになる。
そのための時間が欲しい――
紅は細い足場をもろともせず俊敏に駆ける。
圧倒的スピードで俺のいる金属板へと跳び移ると、
間髪置かず、ひと蹴りで宙に舞い上がった。
揺らめく炎が風に流れるように俺の頭上に降ってくる。
そのとき――!
思いがけない出来事に、間抜けな声が出ちまった。
俺と紅のもとへ、何かが猛烈な勢いで急接近してくる。
横から跳びこんできた一匹の猫が、紅の身をはじき飛ばす。
ドッと押され、紅は金属板の隅に追いやられた。
飛び入り参加の猫は、俺を守るようにすぐそばに着地する。
黒のハチワレ柄。
安堵したのも束の間、
紅が怒りをみなぎらせて突進してきた。
テンダは猪突猛進する紅を自らの体で
紅とテンダ。
どちらも体格がいい。
その大柄な猫同士が、ドンッと激しくぶつかり合った。
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