第86話 窮地②
文字数 1,908文字
リャクの怒りを込めた拳がミミに向かって放たれる。
ミミは体をスッと横に動かし、リャクの攻撃をかわす。
その動きに危なげな様子はなく、むしろ余裕すら感じさせる。
回避と同時に跳び上がって、リャクの頭上に平手打ちを叩きこもうと手をひらめかせた。
リャクは身を縮めてさらなるミミの一手を逃れると、バックステップする。
互いに数メートルほど距離を開け、
いつ激しいバトルになってもおかしくないほど険悪な雰囲気だ。
紅と
ミミがリャクと戦いはじめたので、インテリも動き出した。
こうしてミミはリャクと、インテリはトウと戦うことになった。
ヨウは落下したばかりだから、すぐに参戦できるわけもねぇ。けれども戦いに加わらなければ、巻き添いを食うこともないだろう。
俺は正面にいる相手を睨み据える。
だが、できれば戦闘前にハッキリさせておきたいことがある。
相手に攻撃を喰らえるためには、接近戦に持ち込むしかない。
おれは間合いを詰めるため、標的に向かってジャンプする。
超高速で繰り出されるパンチの連続。
俺の猛攻が紅を襲う。
紅は俺が攻撃してくることを見越して、わずかに後方へ
戦いなれているだけに冷静で行動に乱れがない。
俺の攻撃範囲をある程度見切ってやがる。
間合いを詰め、さらに拳をふるう。
紅は応戦せず、俺の攻撃を注視しながら後ろへ下がっていくばかりだ。
ふてぶてしく
俺がどんだけパンチを放っても、紅はこっちの攻撃範囲を読んで後ろに下がっていきやがる。
さっきからその繰り返しなので、拳は
これじゃあ紅の顔面に一発浴びせるどころか、体をかすめることもできやしねぇ。
紅は身をひるがえし、別のパイプに跳び移った。
俺も細い
我ながら絶妙なバランス感覚。
日頃ヒョウみてぇに木を上り下りしてる甲斐があったぜ。
紅との間合いを詰めると、俺はふたたび片腕を突き出し、拳による連続攻撃を繰り出す。
俺は果敢に攻めかかった。
だが、相変わらず紅に一撃を浴びせることができない。
どうもおかしい……。
攻撃を仕掛ければ仕掛けるほど、紅の
拳は的を打たずに宙ばかり滑る。
俺が攻撃をやめた途端――
ついに魔の手が動き出した。
紅の拳が俺の顔面めがけて襲いかかってくる。
いつもの要領で跳んでかわそうとしたが、体の反応が鈍く、よけきることができない……!
紅の
痺れるような熱い衝撃が顔じゅうに広がっていく。
勢いに負けて体がふらつく。
懸命に
なぜだ?
なぜ、ヤツの攻撃をよけられなかった――!?
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