第20話  脳ミソ、イケネコ

文字数 1,654文字





 手伝いが面倒だと反論するマウティス。



 どうやら叱られなきゃわからねぇみてーだな!



うるせーーーっ!


俺は、この新入りを見捨てるつもりはねぇ!



ふにゃっ




 俺の大喝を浴びて、焦りを浮かべるマウティス。



困ってるヤツがいたら助ける!

それが野良猫だろうが飼い猫だろうが関係ねぇ!


立場は違えど同じ猫同士、助け合わないでどうする!



ふにゅう……




 マウティスは叱られてしょんぼり顔になった。



 実際に反省しているかどうかは怪しいモンだが、ひとまず俺は怒りモードを収める。



この集会がひらかれている本来の目的を思い出してみろ。

猫同士の交流を深め合うのは何のためだったか


ケンカを禁じているのも、食べ物を分け合うのも、仲間としての意識を強めるためだ!



うにゃ



仲間、というのは……?



かけがえのない存在ってことさ!


集会に参加しているメンバーは、みんな仲間だ。

そこに来たオメェも、つまり仲間ってことだぜ!



そ、そうだったんですか……!



ああ。

〝困ったときは仲間同士支え合う〟

俺がボスになって以降、掲げた基本方針だ


この考えを曲げるつもりはねぇし、それがみんなのためになるとも思えねぇ



みんなのためにならないって、どうして?



猫の生活ってやつは常に不安定だからだよ。

とくに野良猫はな


エサの確保にゃ苦労するし、カラス・タヌキ・ヘビなどさまざまな外敵に狙われる


母猫が子どもをたくさん産んでも、全員が生き残れる可能性は低い


それだけじゃねぇ。

新入りあいつみたいに突然捨てられて野良になるヤツだっている



そういった者達を見捨ててしまったら、私たちの共同体コミュニティは育たないというわけですね?



そうだ。自分さえよけりゃいいって他者を見放してたら、いずれ俺たち野良猫は滅んじまうかもしれねぇだろ。

だから手を貸すのさ


すべての猫に手を貸すのは無理でも、せめて俺の縄張りにいる猫くらいは面倒見てやらねぇとな



さすがボス!

イケネコっす!



脳ミソもイケネコっす!



脳ミソもイケネコて……








バカ野郎! 

褒めてほしくて言ってるんじゃねぇんだぞ



じゃあ、何が目的なのにゃ?



そんなの決まってるだろ。

俺がボス猫だからだ!



みんなのリーダーとして責任を全うしている、というわけですね?



まぁそうだが、俺だって役目が面倒になるときくらいあるんだぜ


ボスといえども、見方を変えりゃただの猫にすぎねぇからな


けど、ただの猫ならなおのこと、俺たち猫がそれなりに楽しくやっていけるように手を尽くさなきゃならねぇだろ



じゃあボスは……、

み、みんなのことを、き、きちんと考えているんですね……!



当たりめぇーだ!


むろん新入りだけじゃなく、おまえらが困ってるときも手を貸すぞ


俺にとって、みんなは大事な〝仲間〟だからな!



ボス……!



ステキ……!



感動シマシタ……!



親分さん、すいません!

自分が間違ってましたっ!




 ひと足先に、キンメがダッシュしてインテリのグループほうへ駆けていく。



ふにゃっ!?

意見をひるがえすにゃんてズルいにゃよ!



マウティスよぉ、オメェはまだ手伝うのは嫌だなんてゴネるつもりかよ?



どうしてもって言うにゃら、さっきのチュールのおかわりくらいは欲しいにゃも



ワガママ言うんじゃねぇ!


マウティス!

オメェは罰として、当分のあいだ深夜の巡回当番だ!



ふっ、ふにゃあぁん!



うふふ、欲張りすぎた罰ね



みんなもよーく聞け!


マウティスに味方するなら、みんな全員深夜の縄張り当番の罰だぞ!



ヒェェェェェェッ!



そっちに移動しますニャー!



フッフッフッ。

どうやら形勢逆転のようですね!



インテリもしょうもねぇことで張り合ってんじゃねぇよ


大事なのは〝みんなで協力すること〟だ。

わかったなっ?




ハッ、申し訳ございません!


不肖(ふしょう)ながら心を入れ替え、迷子の捜索にあたる所存でございます!



おう、頼んだぞ


オメェはどうだ、マウティス?



くあぁあぁぁ~。

仕方にゃいから、タダ働きするにゃも



くあくあアクビばっかしてんじゃねー!



ぷにゃんぬ!


にゃら手伝いのあいだ、できるだけアクビはしないようにするにゃも




 マウティスはふくれっ面になりながらも、協力の意向を示したのだった。





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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