第172話 裏バトル③

文字数 1,623文字







 猫は可愛い生き物にゃ。



 それは否定しないにゃ。



 けれども人に個性があるように、猫にも個体差があるにゃ。



 みんなが仲間想いなわけじゃないし、真面目でもないにゃも。







 いまさらわかりきったことを偵察猫が主張してくるので、本当に眠たくなったにゃ。



 とりあえず戦闘意欲を(あお)る材料にはなるだろうと思い、寝たフリをかましてやったにゃも。



 狙いどおり、効果覿面(てきめん)のようにゃ。



おのれ、マウティス!

居眠りをして愚弄(ぐろう)するとは許せぬっ!


貴様のような無礼者は、拙者が天に代わって成敗してくれる!



くああぁぁぁ~。

なんとしてもこのマウティスと決着をつけたいわけにゃね


けれどもお互いの位置が別々だし、いまのままじゃ遠くて攻撃が届かないにゃよ



ふぬぬ、どうすれば……っ!



どうすればもなにも、フツーに上がってくればいいだけの話にゃ



拙者に再び塀に跳び乗れと?



そうにゃね。

難しいことじゃないはずにゃよ



何度も言うが、貴様が降りればよいだけのことではないか!



ペロン……ペロン……



無視かっ!



だってにゃあ、もしもジャンプミスったら罠にドボンだしにゃ



ふっふっふっ、やはりジャンプ力に自信がないのだな



まぁ跳躍(ちょうやく)の名手と称されるほどのスキルはないかもにゃ



つまり、ジャンプ力に欠けては貴様のほうが下というわけだ!



そうにゃねぇ~。

悔しいけれど、認めざるを得ないにゃ


さっきのジャンプは、目に焼きつくような素晴らしいモノだったからにゃ~




 ――まぁ、嘘だけどにゃ。


 

 ここはおだてる作戦で相手の心理をつついてみるにゃも。



そこまで言われると、照れるような……




 ――お、イイ感じで釣れそうにゃ。



 次はおねだり作戦で押してみるかにゃ~♪



にゃあにゃあ。

よかったら華麗なるジャンプをもう一度披露して見せてにゃ♪



エッ!?



もし跳んで見せてくれるなら、ウチはここから下に降りて戦うにゃよ



……本当か?



もちろんにゃ。

100パーセント保証するにゃ



よし、ならば跳んでみせよう!



にゅふふ。

単純でありがたいにゃねぇ




 偵察猫は、一瞬(りき)むと体を宙へ舞い上がらせた。



 まるで重力を感じさせない軽やかな跳躍。



 そうして手近なドラム缶の上へと跳び乗る。



これでどうだっ?



あー……、

いまのはダメにゃねぇ



ダッ、ダメ!?

何故っ!?



いや~残念だけど、遠くてあまり見えなかったのにゃ~


じつをいうと、猫あるあるの例にもれずウチは近眼なのにゃよ


そーゆうわけだから、跳ぶならもっと近くでやってにゃ。

こっちの塀に向かって跳んでみせてにゃも



ぬっ?

貴様のいる塀に向かって跳べと……?



そうにゃ。

ウチのそばに跳んで来てくれれば、よく見えるはずにゃあ



そうやって拙者を口車(くちぐるま)にのせて、払い落とそうと企んでいるのではあるまいな?



にゅふふ、邪推(じゃすい)しすぎにゃよ。

純粋にジャンプが見たいだけにゃも


もしこっちに跳んでキレイなジャンプを見せてくれたら、ウチも下に降りるにゃ。

そのあとで戦いを再開させればいいにゃも



そこまで言うのなら、跳んでやらなくもない。

ただし、約束を守ってもらわねば困る


ジャンプには(すき)(ともな)う。

拙者が塀に着地した後、手を出してこないと約束できるか?



わかったにゃ



絶対に、だぞ!?



安心してにゃ。

約束は守るにゃも



ならば、拙者の跳躍を目に焼きつけるがいい!


タァァァァァーーーッ!




 偵察猫が塀に向かって跳び上がる。



 ジャンプは全身運動にゃ。手も足も使うから隙だらけにゃも。



 とくに下から跳んだ場合、それを上から攻撃されれば防ぐ手はない――



 偵察猫の前足が塀につく瞬間、ウチはダッと跳び上がり、偵察猫の着地点を塞ぐように立った。



にゃはー! 

ひっかかったにゃね!



んなぁぁぁぁぁ!?


お、おのれ……!

(はか)ったなっ!



バカもおだてりゃ塀にのぼる、にゃね!


SK(ションベンクソ)トラップの歓迎を受けるといいにゃも!




 ウチは空中にいる偵察猫めがけて拳を振り上げた。

























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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