第36話 秘密の伝言

文字数 1,193文字





ね、猫が……鳥使いになるなんてっ……!




 正直、信じられない。



 だけど猫は鳥とも仲良くなれるっていうし、あながち無理なことではないのかなぁ……。



驚くのも無理はねぇな


だがアイツはトリ語も理解できる出来スギたヤツなんだ


日頃からハトともコミュニケーションを取り、ああやって連絡係に使ったりもする



さすがボス直属の部下は優秀っすね



ふにゅう……。

負けてられないのであります




 偵察(レコ)猫が面目なさげに視線を落とした。



 そのあいだにハトは低空飛行しつつ羽をバサバサと振って、ボクらのそばの土手道に着地する。



クルッ!

クルルルル!





なんか鳴いてますけど



……不穏の気配あり。

……至急合流を求む……



ボ、ボスもトリ語がわかるんですか!?



少しだけな。

インテリに教わったんだ



ステキ……!




 ウットリした顔でボスを見上げるヨツバちゃん。



うぐっ……。

ボ、ボクもあんなふうに慕われてみたい……




 悔しくて、胸がチクチクする。



 こんなふうに思うことが、妬みってやつなのかな?



 ボクのそういう気持ちを知ってか知らずか、ボスは困ったようにヨツバちゃんから顔をそむけた。



おい、あんまり興奮するなよ。

オメェの体から漂うフェロモンがきつくなるだろ



そんなこと言われても、フェロモンこれは自分じゃどうにもできなくて……



いっそ子づくりしちまえば収まるんじゃないっすか?


オレは別にボスと義兄弟(ぎきょうだい)の仲になっても気になりませんぜ



バカ言ってんじゃねぇよ! 


んなもん、いきなりやるわけねーだろ!



そそそ、そうですよっ! 


ボクの妹だってまだ見つかってないのに、ボスがそんな、む、無責任なことするはずが――




 ボクが目をつむって否定しているあいだに、ボスはヨツバちゃんの首元に顔を寄せていた。



えええええええっ!? 

ちょちょちょっ、ボス! 


なっ、なにやってるんですか!?



なにって、ちょっと近づいてニオイ嗅いでただけだろ




 ……も、ものすごく近距離だ。



 女のコのほうも違う相手なら嫌がりそうなものだけど、ヨツバちゃんは拒絶する素振りもなく、むしろボスのほうへ顔を寄せている。






そそっ、それ以上の接近はダメです!


ぜぜっ、絶対、絶対ダメですよぉ!



わかってるよ。

そうガタガタ騒ぐなって




 すると副ボスがボスとのやり取りを見て、ボクにしたり顔を向けて笑いだす。



はっはっはっ。

新入り、オマエもオレと同じニオイがするぜ



え?



オマエ、メスに夢中になると周りが見えなくなるタイプだろ?



ち、違いますよ! 

ボボ、ボクはただ……



いい加減うるせーぞ。

ハトがビビって逃げちまうから黙ってろ



あっ……すみません



……




 ボクと副ボスが口を閉じると、ハトは戸惑い気味に首を動かしつつも鳴き声を発した。



クルルルルル……


クルル!



そうか……。

なるほどな


さすがインテリ、情報を掴むのが早いぜ



イ、インテリさんは、なんて……?



それはな……




 ボスはハトがもたらした秘密の伝言をゆっくりと語りだした……。





















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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