第129話 佳境②

文字数 1,481文字





 ついに正体不明の裏切り者が発覚した。



 ジロリ組を裏切ったスパイ――



 それはテンダに仕えていた偵察猫(レコ)だった。



テメェはカメの店でねこねこファイアー組から宣戦布告を受けた後、トウとリャクを追って行ったんじゃなかったのかよ!?



追っては行きましたよ。

ただし、途中で切り上げましたけど




 すると偵察猫の発言を聞いて、戦闘中だったトウとリャクも話に加わる。



へへへ。

途中で切り上げてもらわねーと、レコに追いつかれちまうからな



レコはおれらよりも俊敏だからよぉ。

隠密ステルススキルもピカイチだ


最初にあの土手に行ったオマエらの行動も、じつは筒抜けだったんだぜ



なに!?



では土手にいたボスや新入りが、偵察猫に監視されていたというのか!?



フッ、そうだとも。

おれがレコにジロリ組の動きを見張るよう命じたのだ



そう――

僕のボスは、ねこねこファイアー組のボス・(くれない)


けれどジロリ組に潜入してからは、僕の(あるじ)は副ボスのテンダになった



テメェがジロリ組に入ったとき、俺がテンダに従うよう指示したからな



おかげで僕は、副ボスにくだらない仕事を押しつけられた。

たとえば、発情したメス猫を調査するとかね


じつにくだらない調査だったけれど、そのどうでもいい任務の合間にジロリ組の動きを偵察していたんだ



んで、仕入れた情報をねこねこファイアー組に流していた――ってワケか


テメェがそこまで用意周到なスパイだったとはな



フフフ……、

秀でているのはスパイ活動に限った話じゃないですよ


トウとリャクを追った後、途中の河川敷でジロリ組が来るのを待ち伏せていたんです。

気配を殺して、ね



待ち伏せていただと!?



ええ、そうです。

さすがのボスでも、僕の気配は察知しきれなかったようですね



一度ならず二度もテメェに騙されたってわけか



まぁ、索敵(さくてき)されないよう離れてはいましたが


初めてあの土手で出会ったときも、草地に潜む僕の存在に気づいていなかったのでしょう?



あのときは妹のニオイを追うのに集中していて、周りのことはあまり気にしてなかったからな


警戒しながら移動していたら、気づいたに違いねぇ



でしょうね。

しかし新入りや、そのほかの猫たちはそうもいかない


あの者達は僕の待ち伏せにも気づかず、奇襲を受けることとなったわけです



奇襲だと!?

じゃあ、新入りや熊介くますけたちは――!?




 偵察猫は笑みを浮かべたまま目をスッと細める。



 もったいぶった動作のあとに、首を軽く左右に振った。



見るも無残にズタボロですよ








ふたりともやられたっていうのかよっ!?



そうです。

弱すぎて話になりませんでした



テメェ! 

よくもやってくれたな……っ!




 怒りで血が沸騰する。



うおおおおおおおおっ!

ふざけんなぁぁぁぁぁ!




 思考がふっ飛び、イキリ立って偵察猫のもとへ跳びかかろうとしたときだった。



 テンダが下から声を響かせる。



おい、コラァ!

てめぇはオレの部下だろうがっ!



部下? 

まだそんなことを言っているのか、バカバカしいっ!


おまえを主と(あが)めたのも所詮形だけのこと


もともと僕は、おまえを裏切るために偵察猫レコねこになったのだからね!



俺を裏切るため?

なぜだ……?



なぜ……だと? 

理由もわからないとは愚かな!




 たちまちレコの顔が険しさを帯びる。






 突如、顔つきが一変した。



 それまで溜めこんでいた憎しみを一挙に放出させたような、深い怒りに満ちている。




テンダ! 

おまえはずっとずっと、僕が何者か気づいてもいなかった!


じつの弟が、すぐそばにいたというのになっ!



弟だとぉ!?



マジかよ……!?




 あの偵察猫がテンダの弟!?



 いったい、どーゆうこった!?























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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