第62話 辛酸をニャメつくす
文字数 2,192文字
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紅の指示に従ってトウとリャクが廃工場から出ていったにゃ。
するとモブニャンがふたりを追って、ボスファミリーのいる大部屋から出ていく。
ウチは金属板の上を音もなく通り抜けた。
足元は細長い骨組みだらけにゃ。
狭い通路を進むと、その細い道を中途半端に覆う屋根の上へサッと跳び移る。
ぼやけた視界の向こう側には、トウとリャクに追いついたモブニャンの姿が。
トウとリャクはナメきった返事だけして、
モブニャンとワル猫たちのあいだで、何か取り決められていたようにゃね。
トウとリャクは歩みを止めて振り返ると、薄笑いを浮かべてキツーイ発言をくり出した。
名前の挙がったヤミミンは、おそらくモブニャンと恋仲にあった猫のことだろうにゃ。
トウとリャクがモブニャンに背を向けて歩き出した矢先――
とうとうキレたモブニャンが行動に出たにゃ。
怒りの拳を突き出し、トウとリャクの背後から跳びかかる。
案の定、
あっけない幕切れにゃ。
むなしい風だけが起こって、足元から
追いつめられたモブニャン。
悔しげに爪の先端をグッと地面に押し当てながらも、敵の攻撃を恐れて身をこわばらせる。
言ったそばから、トウとリャクの拳がモブニャンに襲いかかる。
真正面から二つの拳を浴びて、のけ反りながらはね跳ぶモブニャン。
宙に浮いた体を制御しきれず、通路沿いの瓦礫に叩きつけられる。
モブニャンは悔しそうにゃ。
きっとプライドがバキバキに砕かれたに違いにゃいも。
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モブニャンはどうにか起き上がると、よろめく体を引きずって建物の外へ出て行った。
ウチはそれを尾行することにした。
ボスにゃんのもとへ向かったワル猫どもを追って、みんなと合流するのでもよかったけどにゃ。
ま、ワルどもはほうっておけばいいにゃも。
周辺に猫の気配がないところまで来ると、そっと背後に忍び寄りモブニャンに話しかける。
あまりの衝撃に、はからずもお先真っ暗状態を顔面に描いてしまうモブニャン。
ウチの意味深な発言にも、モブニャンはうなだれるばかりにゃ。
今更だけどこのモブニャン、お世辞にも優秀とは言えないにゃ。気力、胆力、どう見ても平均以下でしかないにゃ。
そんな猫が敵地に単体スパイとして潜入するにゃんて、ホント解せん話にゃ。
だからウチは、なぜ〝あのモブニャンがスパイに志願したのか〟ずっと気にかかっていたのにゃ。
けれどもさっきのワル猫どもとのやり取りを聞いて、ようやく得心がいったにゃも。
驚き顔を向けてモブニャンは固まった。
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