第39話 ボス待ちしながらダメ出しトーク
文字数 2,239文字
ワイはいま、カメの店っちゅうペットショップのすぐ近くにおる。
ミミとヨウも一緒や。
店の裏側にある駐車場で親分さんらが到着するのを待っとるんやけど、なかなか来いへん。
みんなの視線が下っ端の猫に注がれる。
モブニャンは店のそばにある亀の置物の下に手を突っ込んで、その下に何かないかと物色しとるらしい。
置物の下に潜んでいるのは大概が小さな虫ばかりやけど、たまにエサの粒が落ちとることもある。
見つけたらラッキーやで。
ミミは閑散とした駐車場を気取った足取りで歩いてみせた。
駐車場の隅にある植え込みのほうから、インテリ兄さんが歩み寄ってきた。
インテリ兄さんが賢そうな顔を道路のほうへ向け、ヒゲをピクリと動かす。
妙なニオイ言われても、ワイにはサッパリやった。
ちなみにワイは鼻炎持ちやねん。猫でも鼻炎になるんやで。
ミミやヨウは考え込むような真面目くさった顔をして、兄さんの問いに答える。
見張りのモブニャンが道路のほうへ身を乗り出しながら歓喜の声をあげはじめる。
ワイも通りのほうへ顔を向け、流れにノッてみた。
遠目のぼんやりした輪郭でも、ボスの存在感はケタはずれやった。
艶やかな黒い毛がまばゆい光に照らされると、深みのある輝きが至るところに生みだされて、体が動くたびに躍っているみたいに見える。
まるで夜の海を見ているみたいや。
それだけで神々しいゆうか、漆黒の王者としての底知れないスケールを感じさせる。
さすが……ボス猫!
親分はこちらへ歩みながら、クールな声で応える。
その後ろにいるのは新入り猫。
それよりやや前を歩いているのは、副ボスのテンダ兄さんのようや。
相手が徐々に近づいてきたので、さすがのワイでもニオイを嗅ぎ取れる。
まさかウチの親分さん、とうとう行きずりのオンナに手ぇ出してしもうたんか!?
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