第16話 従わない猫たち

文字数 1,366文字





 マウティスの発言を皮切りに、手伝いを拒否するヤツらがこぞって不満を訴えはじめやがった。



手伝いは嫌ニャー!



気乗りしないニャー!



ハァ……、

思ったとおり、厄介な状況になったぜ




 新入りはすっかり落ち込んだようで、身を縮めてうなだれている。



はうぅぅぅ……



妹さがしを手伝ってもらおうとここへやって来ただろうに、真っ向から拒否されちゃ凹むのも無理ねぇか




 すると横合いからキンメが新入りに話しかけた。



なぁ新入り



は……はい……?



手伝い頼むんなら出すモン出してーや。

最低でもニボシの1本くらいは出してくれへんと、ワテらの心は動かんで



エッ……ニボシですか!?



せや。猫社会は身の安全が保障されてへんし、行動にはリスクが伴うやろ。

善意だけではやっていけんのや



で、でも、ボクは捨て猫の身ですから、み、みなさんに提供できるものなんて、とても出せないっていうか……



ほな、タダ働きせえっちゅう話か



ン~、無償奉仕となるとねぇ……



悩ましい問題デス



にゃはは! 

ウチの思ったとおりにゃね!


みんなの本心は、手伝いたくないで一致のようにゃ




 優越に浸るように高らかに笑うマウティス。



 そこへすかさずジロリ組のナンバー2が躍り出た。



お待ちなさい!



にゅ?



みんなそろって利己主義丸出しとは情けない!

それでもジロリ組の一員ですか!?



もちろんそのつもりにゃよ



うにゃー!



うにゃにゃー!



だったらなおのこと、この新入り猫に協力すべきです!



えぇ~嫌にゃも。

そもそも手助けする理由がどこにあるにゃ?



惜しまず協力することがこの組のためにもなるからですよ


哀れな新入りを見放すようでは、ジロリ組も冷たいヤツらの集まりだと、世間に悪い噂を流すことになりかねません!



Umm(ウーム)……



悪評が立つのはうれしくないわね~



せやけど、ここだけのやり取りなのに、外部にバレますかね?



油断は大敵だぞ、キンメ。

露見しないと思ったら大間違いだ


さきほどからこの空き地はカラスたちに観察されている


彼らが吹聴すれば、ワタシのようにトリ語を解する者達に伝わり、たちまち拡散されてしまうだろう



ウヒャ。

カラスは侮れまへんな



つまり、インテリの言うことを要約すると……


組の名誉を傷つけたくないから新入りに協力しろってことにゃね?



ええ



くあぁぁ~、バカくちゃ!



なっ……!?



だって組の名誉にゃんてドーデモイイにゃも。

みんなで適当に集まって、好き勝手言いながら楽しく交流できればそれでいいのにゃ


この集会だって、そのためにあるようなものにゃよ。

にゃあ、ボスにゃん?



まぁ、そーだな



みんなもそう思ってるにゃよね?



はいですニャー!



そうですニャー!








さすが姐さん!

ブレずに相手の意見をぶった切っとる



たしかに楽しく交流デキルのはイイコトデスケド……



マウティスが言うと同意したくなくなるのよねぇ



ふにゃん。

このマウティスを不当に扱うつもりにゃね



仕方ねぇだろ。

オメェはアクドイことばっか言うからインテリより人気がねぇんだよ



フッ、もっと嫌われまくって、組から追放されてしまえばよいのです!



インテリ。

オメェの考えてることも、なかなか黒いぞ



ボスにゃんの言うとおりにゃ。

とんだ腹黒偽善者にゃね!



失敬なっ……!



おい、ふたりとも。

くだらねー言い争いするなって




 まったく、ちっとも話がまとまらねぇ。



 こーゆうとき、協調性のない猫ばかりだと意見がまとまらなくて困ったモンだぜ。



 

















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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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