第77話 大事な仲間
文字数 2,036文字
突如、俺たちを襲撃したねこねこファイアー組のボス・紅は、去っていった。
こんなさびれた廃墟でも、吹きつける春の夜風は心地いいほどだ。
だが今後厄介な事態が待ち受けてるとわかっているだけに、みんなの顔つきは逆風に煽られたような不快感がにじみ出ている。
そのへんにいたモブネコたちも紅が去ったときに逃げちまっている。
情報を得ようにも、なんら手段がない。
ついでに言うと、近くにいるインテリも泥臭い。
紅の不意打ちのせいでああなっちまったんだから責めるつもりは一切ねぇが、これじゃどんなに足音に気を遣ってみても気配バレは確実だろう。
言わずとも弱みを察したインテリ。
自分でせっせと舌を動かし、毛に付着した泥水を拭いはじめる。
ヨウは率先して腰を上げ、インテリに近づくと体の掃除を手伝いだした。
穏やかに言って、ヨウはインテリの耳元の汚れを丹念に舌で
日頃から手入れし慣れてるだけあって舌づかいに無駄がなく、泥汚れはみるみる落ちていく。
ミミはインテリに顔を寄せると、片側の頬をペロリと舐めた。
ミミのおかげで灰色に染まった毛が、本来の白さを取り戻してゆく。
って、にこやかに言っちゃいるが、涙腺が刺激されちまいそうだぜ。
俺はインテリの後ろに回り込むと、手の届きにくい頭のてっぺんを舐めてやった。
まぁこんなこと、普段は言わねぇけどよ。
結構マジで思ってることなんだぜ?
感激したように瞳を潤ませるインテリ。
が、さすがに涙をこぼすわけにはいかないと思ったようで、周りを憚って顔を伏せる。
俺はインテリの心情を察して、軽い口調で言った。
インテリの胸にアツイ決意が宿るのを感じ、俺は笑顔で応えた。
それからしばらくのあいだ、みんなでインテリの毛づくろいに
熱心にやった甲斐あって、インテリの身にまとわりついていた不純物はだいぶ取り除かれた。
インテリ、ミミ、ヨウ、みんないつになく表情が晴れ晴れしている。
萎えちまった元気もすっかり回復しているみたいだ。
これも仲間を想う気持ちのおかげだな、きっと。
俺たちは地面を踏みしめ、堂々と敵の待ち受ける闇の本拠地へと突っ込んでいった。
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