第199話 不一致
文字数 2,036文字
人間に捕獲された
俺はテンダとチータと共に、窓の外側から熊介の様子を見守っている。
熊介は、診察台の上に乗せられている。
人間を警戒し、背中を丸めて縮こまっているものの、なにかあったらすぐ動けるようにと前足だけは伸ばし気味だ。
一方出窓に
肩をガクリと落として
診察台のそばに立つ
ケガという言葉に反応して、タイコーはシッポをペシペシ振りつつ否定しだした。
熊介は衝撃を受けたように目を見開いた。
ついでに言うと口も半開きなので、どことなく間が抜けているように見えなくもない。
俺が声を張って鳴くと、タイコーは振り返って窓の外へ顔を向ける。
そう言ってタイコーはカーテンに手を伸ばし、手前に軽く引っ張りはじめた。
すると、それに気づいた朝陽が窓のそばに来て、カーテンを手早く端へ動かす。
俺たちを見て朝陽はうれしそうだ。
タイコーの家に来るのは初めてじゃねぇから、この家の人間たちとは顔見知りの仲だ。
ほどなくすると、朝陽の母親が診察室のドアを開けて中に入ってきた。
朝陽は施錠を外し、出窓を解放した。
網戸があるから室内に入ることはできないが、さっきよりずっと声はよく聞こえる。
すると、それまで楽しそうにしていた朝陽の顔に暗い影が差しはじめる。
鋭い声が空気をピシャリと叩くように響いた。
チータが困ったように首を
まるで急な雷雨の訪れだ。
室内は暗雲が垂れこめたように、妙に重苦しい気配が漂いはじめていた。
(ログインが必要です)