第202話 消えない悩み
文字数 2,047文字
作戦は失敗した。
それどころか、重い空気はさらに悪いほうへ流れようとしている。
自身の耳に黒くて細長いホースのようなものを装着すると、それを
診察台の上で熊介の体がモゾモゾ動き出した。
逃げようとしても朝陽が熊介を掴んでいるので、激しく抵抗しない限り抵抗は不可能だ。
聴診器による健康チェックが終わった。
次はどうするかと俺が話を持ち出すより先に、篤子が朝陽を見つめながら言う。
喉が詰まったような声で朝陽が言う。
俺とタイコーの会話に交じって、熊介が不満げに鳴く。
言ったそばから熊介の挙動が落ち着かなくなった。
室内はさして広くもない。
熊介はあっという間にドアへ駆け寄ると、ガリガリとその表面をこすりはじめた。
暴れる熊介。
けれど篤子の手は分厚そうな手袋で守られているので、爪を出してジタバタしても
タイコーに
落ち込んだようにうつむく朝陽。
悩みを口に出してからというもの、本来の明るさを奪われたように暗く沈んでいる。
俺にはあのコの悩みの
けれどもまだ子どもにすぎない
(ログインが必要です)