第214話 猫の呪い?
文字数 1,416文字
お医者さんは診察室に戻ってくると、頭を軽く抱えながら説明をはじめた。
小さな子はドア口に立ったまま、自分の体を抱きしめるように両手を組んだ。
身を縮め、視線を床に落としたのも束の間――
突然、何か思い立ったように顔を上げる。
お医者さんは笑ったけれど、すぐに表情が硬くなる。
笑い飛ばそうとして失敗したみたいだ。
二人は恐ろしいものを見るかのようにボクのほうへ首をギギギッと動かした。
ボクは、心のどこかで飼い主さんが迎えに来てくれるかなって期待していた。
ひどい飼い主に違いはないけれど、憎悪するほど嫌いだったわけじゃない。
たまに撫でられると、戸惑いを感じながらもうれしかった。
だからボクは、あの家から脱走したいとは思わなかった。
ただ、愛されたかった……
だけど、それが無理なことはわかってる。
下外道さんは、ボスたちの言うとおりの人だから。ボクらを捨てたことを後悔もしなければ反省もしないだろう。
あの家の人たちの頭にあるのは、自分と自分たちのことだけだ。ボクは家族の一員じゃないから気にかけられもしない。
住む家もない。
妹は行方知れず。
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