第203話 対照的な子ども時代
文字数 1,467文字
俺が子どもの頃は、もっと気楽なモンだった。
親猫とギクシャクすることもなければ、物事に苦悩することもなかった。
俺のカアちゃんは、心身共にたくましい猫だった。
地べたにコロンと横になると、肉厚な胸を広げて、食欲が満たされるまでミルクを与えてくれる。
俺は早くミルクが欲しくて、その乳にがっついた。
ガリッ!
勢い余って歯が乳に当たっちまった。
生まれて1か月近くにもなると歯が生えそろってきているから、乳の肉を噛んじまうのが俺の悪い癖だった。
そのほかにも、他の猫とじゃれ合っていると――
幼い頃の俺は、ドジってばかりいた。
それで親に怒られることもしょっちゅうだったけど、悩んだことはねぇし、
だがそうやって過ごせたのは、大きな悩みに振り回されずに済んだからだ。
対照的に
暗く沈んだ朝陽に母の
朝陽は暗い表情のまま、どこか遠くを見るように、窓辺にいる俺たちを見つめている。
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