第206話 謎の儀式

文字数 1,431文字






 熊介は早く診察室(ここ)を出たいと言って、診察台を下りてから、床に身を縮めたままだ。



いいかげん熊介(くますけ)をどうにかしてやらねぇとな



それでは、これから熊介の回復を願って、祈祷(きとう)を開始する!



おー!

とうとうこの時が来たか!



長かったですニャ……!



では、ゆくぞ!




 タイコーは、刺すようなまなざしを熊介に()えた。



 それからリズムを刻むようにして、ゆっくりとシッポを揺らしはじめる。



 まるで暗示をかけるかのように、間延びした声で(ささや)きだした。



眠くニャ~ル 

眠くニャ~ル



えっ……? 



眠くニャ~ル 

眠くニャ~ル



ニャ……!?

ニャんですか、それはっ!?



睡眠を(うなが)す呪文であーる!



まさかそれって、催眠術(さいみんじゅつ)ってことですニャ!?



そうだ。

これは我が祈祷の効果を高めるために必要な儀式なのだ



ニャるほど……。

でも、まったく効いてる感じがしないですけど



ククク、最初はみなそう言う。

しかし、睡魔(すいま)(あらが)っていられるのもいまのうち!




 タイコーは、やや語気を強めて呪文を唱える。



眠くニャ~ル! 

眠くニャ~ル!



ウッ……ウウッ……!?



おっ、熊介の様子が変わってきたぞ



眠くニャ~ル! 

眠くニャ~ル!



ウウウウウッ!



眠くニャ~ル! 

眠くニャ~ル!



はわぁ~~~っ!




 ついに熊介の両目は閉じられた。



おぉ~やったぞ!



見事に落ちたっすね!



さすが催眠術なのです!



フハーッ!

我に不可能はニャい!




 タイコーがキメ顔でドヤッた直後のことだった。



 突如、熊介がまぶたをこともなげに開いて、不満を訴えだす。



やっぱり無理ですニャー!



無理だと?



そうですニャ。

眠くなるどころか、呪文を囁く声とかうっとうしくて、逆に目が冴えますニャ



目が冴えるとはおかしなヤツだ。

我はいつでも寝られるというに




 タイコーはさっさと目を閉じると、それまでと打って変わって、おだやかな寝息をたてだした。



スヤァ~……



いやいやいや、ホントに寝ないでくださいニャ!



ふわぁぁぁ~……。

じつは俺も眠たくなってきちまった!



えええっ、ボスもですニャ!?



なにせ今日はいろいろあったからなー



オレもボーっとしてると、ウトウトしてくるっす



僕も丸1日寝られそうです



みなさん、戦いでお疲れなんですね



フォッフォッフォッ。

戦いで疲れたから眠くなると思ったら大間違いだぞ!


我は家にずっと居て、食っちゃ()を繰り返しているだけだが、果てしなく眠いのだ!



ちっとも威張(いば)れることじゃないですニャ!



威張ってなどいない。

猫とはそういう生き物なのだ! 


その事実を伝えておかなくてはならんと思い、主張したまでのこと。

異論はあるかっ?



ニャ……ニャいです



うむ。よろしい!




 タイコーは満足げに微笑み、長いシッポをふわりと揺らした。







どもー!

作者代理の猫好きメガネ、

アイ・キャットでーす!


猫はよく寝る生き物ですよね。

ウチの猫が寝まくりで心配、という方もいるかもしれませんが……


猫が長時間睡眠する理由は、

ハンターとしての名残から狩りに備えて体力を温存している、

という説が濃厚です


まれに病気が関わっていることもありますが、そういうときは、食べない・元気がないなど、別の行動面に影響が出てきます


以上の点から、猫が寝てばかりいても心配無用ですので、安心してかわいい寝姿を堪能してください


くれぐれも睡眠を妨げないよう気をつけてあげてくださいね~



読んでいただきありがとうございました!

それでは皆様ごきげんよう~


























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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