第183話 無謀な説得
文字数 1,110文字
ほわわわわ～ん……
夜の闇をピンク色に彩るような
それはメス猫が発する、特有のフェロモン臭。
うにゅにゅにゅにゅ！
凄まじく良いニオイにゃー。
正気が保てなくなりそうニャー
でも、さっきから流されてばかりだニャー
すぐにあっちへ行ったら、いかにもダメなモブっぽくて嫌ニャー……
ウフフ。
意地張ってないで、こっちへいらっしゃ～い
フニャ～！
やっぱり無理ニャ～！
ヤミミンの色気には
あっしは香りの魔力にやられて、ヤミミンのもとへ一直線に寄っていく。
ウフフ、オトコってやっぱりバカね
ほくそ笑むヤミミン。
ところが――
彼女に接する手前で、ふとトウとリャクのことがよぎった。
ぐにゅにゅにゅにゅ……！
なぁに、どーしたの？
あっしは聞いたニャ！
ヤミミンは、トウとリャクと浮気していたニャ！
あー、それね。
別に浮気じゃないわよ
浮気じゃないって、そんなの嘘ニャ！
たしかにトウとリャクから聞いたニャ！
必要だから仲良くなっておいただけよ
必要って……、
なんであっし以外のオスが必要なのニャ！？
そんなの決まってるでしょ。
より多くのオスと関わったほうが都合がイイからよ
もし子どもが生まれたら、あっしがヤミミンたちをしっかり守るニャ！
他のオス猫とは、二度と関わらないでニャ！
あたしを束縛するもり？
フニャー！
あっしはただ、ヤミミンと一緒になりたいだけなのニャー！
だから、あっしだけを見ていてほしいニャー！
それって自分本位の独占欲でしょ？
ちっ、違うニャー！
でもモブニャンは、自分だけねこねこファイアー組からジロリ組に乗り換えようとしてるのよね？
ハッ……！
ま、モブニャンはいいわよね。
所詮種まくだけの身軽なオス猫だし、ジロリ組に移ってもやることは同じなワケだし
いくらなんでもその言い方はヒドいニャ
とにかく、モブニャンがどう説得しようと、聞き入れる気はないわ
そもそもモブニャンは、メス猫の大変さをわかってなさすぎだもの
エッ！？
そりゃあこっちだって、清潔な敷物や栄養豊富なゴハンが用意してある環境なら、相手がひとりだろうとショボかろうとどうにかなるわよ
ショッ、ショボ……？
それって、あっしのこと……？
でも残念ながら、
せめて相手くらいはマシなの選んでおかないと、最悪、全滅して終わるの！
そ、そんニャア……
じゃあこれからもヤミミンは、トウとかリャクとか他のオス猫と仲良くするのニャ？
当たり前でしょ！
そんなの嫌ニャアアア！
あっしは……あっしは……、
オンリーワンの関係がいいニャーーーーーッ！
感情のままに叫んで、あっしはその場から走り去った。
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