第217話 必殺技にはかなわない

文字数 1,218文字








 俺はオドロキの新事実に目を丸くする。



その情報に間違いはねぇんだな?



この目で見て確かめたわけではない。

だが、確かに聞いたのだ


あの者からな――!



あの者?

誰のことだよ?



そなたもよく存じている者じゃ。

新キャラではないぞ



新キャラ言うな



フッ




 タイコーは俺のツッコミを鼻であしらい、姿勢を正して遠くを見つめる。



あれは数日前のことだった――……








 動物病院(我が家)に、とある常連が飼い犬を連れてやって来た。



こんにちは~



あーどうもどうも



定期検診ですね



そうです~



順番が来ましたらお呼びしますので、待合室の席に座ってお待ちください



はいは~い



ん?



……




 ちょうどそのとき、我は待合室にいた。



 普段は近寄らないが、棚に置かれたチュールをたまに食べたくなるときもあるからだ。



 チュールを1本くわえて別室へ移動しようとするところで、デカイ犬から声をかけられた。



おい、ドロボー猫



ぬ?

ドロボーだと?


これは我が家のモノじゃ。

我が家にあるものを食って何が悪い!



チュールくわえたままフゴフゴ言われてもわからへんわ




 忌々(いまいま)しい犬めと思いながら、チュールを足元に置いて言い返す。



愚か者がっ!

我をジロリ組の先代ボスの母・タイコーと知りながらケンカを売る気か!?



自己紹介は、いらへんで。

お互い顔合わせるのが初めてちゃうやろ



そんなことはわかっている。

そなたはカメの店のダイゴローだろう?


相変わらずペットショップ特有のニオイが鼻につくぞ



アホぬかせ!

おれの趣味は日光浴や。

日向(ひなた)ぼっこは、ニオイ対策にもなるんやで!








 ダイゴローが吠えたので、飼い主がその体に触れながら注意する。



どうした? ダイゴロー。

まわりの人がビックリしちゃうから静かにね



すんません



ククク。

忠犬(ちゅうけん)のフリをしおって



アホか。おれは元々忠犬や!

近所じゃめっちゃ賢くて飼い主想いの番犬として知られとる



ケンカ腰で何を言うか。

犬のクセに猫かぶりなヤツめ



かぶってへんわっ。

やたらとキレる猫どもと一緒にすな!




 ダイゴローは気分を落ち着けようと鼻をペロペロ舐めると、そこからフゥ~ッと息をはき出した。



なんや、せっかくエエ情報教えたろかと思うとったけど、アホらしゅうなってきた



エエ情報?



せや。

聞きたいか?



さあな。

内容による



新入りの妹の行方や



ほう!

ならば聞いてやろうではないか



いやいや、聞いてやろうってその態度がありえへんわ


そこはフツー、

「お願いしますとか、教えてください」って言わなアカンところやぞ



猫は気高き生き物。

そして、我は頭など下げたくはない!



ドヤるな



これでも喰らえーーーっ!

(うつく)シック・リクエスト!



うっ……!








か、かわいい……!



クックック。

猫の魅力、思い知ったか!



わかった。

おれの負けや……。

とっておきの情報、教えたる



では、話してみよ



じつは、新入りの妹は……



北条(ほうじょう)さ~ん、診察室へどうぞ



は~い



ここで呼び出しかっ




 人間は、動物の空気を読んではくれないのだった……。





























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登場人物紹介

ボス ♂

野良猫。先代の跡を継いでジロリ町のボスの座についたが、自身は平和主義でもあり自由を求めているのであまり乗り気ではない。非常にケンカが強く、疾風の猫パンチを見切れるものはいないという。

(本名:プルート 通称:ボス、親分、リーダー、カシラなど)

マウティス ♀

ボスファミリーの一員。野良だが先代ボスの子。

「にゃも」など、しゃべり方に独特の趣がある。とてもしたたかな性格で賢いが、食い気には勝てず、好物のニャオ☆チュールを手に入れるためなら平気で他者を利用する。

インテリ ♂

ボスファミリーの一員。飼い主の老夫婦が死亡したことにより野良となる。猫にしては博学で語学も堪能。トリ語も解する。その冴え渡る知能を活かし、組織の交渉役として縄張りの維持に努めてきた。

(本名:あずきちゃん、肉球があずきに似ていることから命名されたが彼は気に入っておらず、しばしば違う名を名乗る)

キンメ ♂

飼い猫。多頭飼育崩壊から生き残り、ボランティアらによって関東在住の住人のもとへ譲渡され、ジロリ町に移住する。当時の名残が残っているせいか、口調は大阪弁。明るいキャラでよくしゃべる。

(本名:なし、名前がなかった。名づけられたのは譲渡先に行ってから。目が金色なのでキンメとなる)

ミミ ♀

飼い猫。耳の形に特徴がある。麗しの三毛猫を自称しているが、発情期に誰も寄ってこなかったという悲しい黒歴史を持つ。ヒカリモノに目がなく、自身の首にもキラキラネックレスを身につけているが、あちこちに引っかけて壊すので飼い主に呆れられている。随時彼氏募集とのこと。

ヨウ ♂

飼い猫&洋猫。飼い主の目を盗んでしばしば脱走する。自慢の毛を維持するためいつも毛づくろいしてばかりいる。海外ブリーダーのもとで育てられたため、日本語がやや片言。生まれたばかりの兄弟が多数いるが、引き合わせてもらえないのであまり仲良くはない。

??? ♂ 

ちょっと汗かきすぎな新入り猫。どうも様子がおかしい……。


ちなみに猫は肉球からしか汗をかかない。顔グラではわかりやすさを重視して強調している。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

モブニャン

ネコの集会に参加する猫たち。集会への参加期間の浅い猫は下っ端になる。モ〇ニャンという某キャットフードに名前が酷似しているが関係性はない。

アイ・キャット

i〇adを所有する謎の猫。その便利グッズで猫に関する豆知識や雑学を解説してくれる。

ストーリー上には登場しない。

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