カバー下 正義の心（２）
文字数 579文字
ただいま
……。
……。
蘭ちゃん、見知らぬ金髪の子が俺をにらんでいるのだけど
そいつは私の彼氏だ。悪でないから倒すなよ。挨拶しろ
竹生夢月、中学三年生の正義の味方です。昨夜デビューしました。
さっそく戦闘員を十六体と幹部補を二体ぶっ殺したんだよ
竹生には野生の感みたいなものがあってな。教えてもないのに、このマンションにやってきた
……。
この子は天使か？ 会社がスポンサーやった絡みでアイドルグループのトップ三名と会ったことがあるが、この子は規格外にかわいいぞ。つまり
髪の毛を染めているってことは、芸能関係なの？
ううん。義務教育でもマイルールなんだよ。認めなかったら不登校して八つ当たりで悪をぶっ倒す
……。
もうすぐ卒業だね。進路は決まったの？
うん。＊＊＊＊高校に行くんだよ
正義の心が発動した。
蘭ちょっと。
……あの高校に進学する者が正義の味方を名乗るのを認めたくない
どうして？
なんていう地獄耳だ。
竹生は実社会でも、悪を二十名ほど病院送りにしている。これ以上の正義の女の子はいない
でも過剰防衛とかで怒られました。あっ、チカイエカだ。えいっ！
パリン
おお。もう魔法を使えるのか。将来楽しみだ。窓ガラスを割ったのは許すが、破片で外にいる人間が傷つくかもしれない。内側へ倒すようにしろ
うん！
……。
ちっぽけな俺の正義を飲みこむ絶対正義。
世の不条理を知った三十一歳の春であった。
