08 さらなる修羅場
文字数 3,604文字
モスプレイに上空から誘導され、荒れた林道に入る。
薄暮の空に漆黒の機体は見当たらない。
エリーナブルーに教えられる。長身で凜とした横顔に
上空からの指示に従い、林にひそみ広場を覗く。
シルクイエローが優しく微笑む。こいつも男だ。そして俺より強くて優しい人だろう。
奇声をあげながら気勢をあげるのは、下級戦闘員が十名。中級が二名。褐色のコスチュームの上級が一名。人質のまわりで野蛮なキャンプファイヤーみたいに踊っている。こりゃ気を失うわな。
すぐに助けにいきたいけど、
緑色の迷彩服にベレー帽を被ったエリート戦闘員が一名いる。こいつだけは、他の連中の後ろで腕を組んでいる。たまに時計を気にしている。
いない人間は代償が無いかわりに貢献も受けとれないのか。なんだか嫌らしいシステムだな。最初からスパイラル(意味は茜音に教えてもらってある。連鎖とか螺旋だ)に取りこまれているみたいだ。
アメシロの声がモスウォッチ(腕時計の正式名称だ)からした。
ゲームでも最後にボス戦だものな。司令部が上空から見守っていると心強い。
実質はレベル9だろ。エリート戦闘員の半分だろ。
ブルーが飛翔する。俺はイエローと共に地を駆ける。作戦は少し変更した。ブルーが人質を解放して守る。残る二人は敵を端からやっつける。最後にラスボスエリート戦闘員を三人がかりでぶっ倒す。
司令官が言うには、俺たちだけで片を付けて鼻を明かす作戦だそうだ。
突入した直後にかよ。もはや引くことなどできない。
ゴーグル越しに、立ちすくむシルエットが二体映しだされた。
どうにもならない! こんな時あの子だったら。
慌てふためく影が同士討ちしている。生き残った背中にソードを突き刺す……。
戦いのさなかにふと思う。初代レッドはどうしたのだろう?
げっ、一撃で倒れぬ奴がいた。振り向き俺へと刀をおろすので、ソードで受けとめる。……こいつら
押されて目の前まで来たモスウォッチに尋ねる。中級戦闘員の顔がにじり寄る。
敵の眉間に刺さる。中級は薄れていき、圧がなくなる。
俺は肩で息をしていた。
頑張れ、スカシバレッド!
白煙の向こうに黄色い影が見えた。槍を振り回している。煙幕が薄らいできている。
黒色が二体向かってきた。刀を軽やかに避けながら一体を切り裂く。振り向きざまにもう一体の背中を――。
ヅドーン!!!
右肩を衝撃が貫いた。同時に爆音。つんのめり転がる。激痛が押し寄せる。
朱色コスチュームが銃を構えていた。上級戦闘員かよ。
まったくもってゲームのノリだがリアルに痛い。この子の生命値はどれくらいだろうって、腕がしびれてきた。
また銃声。
心のどこかで声がした。
だからしゃがんだ姿勢から跳躍する。際どく銃弾を避ける。
右肩を押さえながら眼下を見る。イエローは中級と槍で交戦していた。その足もとで一体が消えていく。
目前に飛んできたエリートに蹴りを喰らう。こみ上げてきたあの子の胃液を口に感じた。
左頬に衝撃を受けて首が曲がる。
この子の顔を殴るな!
怒りが沸き立つのに、俺は墜落していく。
ズシン!
ズドン!!
下級戦闘員の卑しい喝采が聞こえる。
パラララララと、軽やかな機銃掃射の音。
エリートは俺を持ちあげ上空からの盾にする。
エリートが俺の両手を
イエローは身動きしない。太ももから地面を濡らす出血が、もはや真っ暗な闇なのに視認できる。
ブルーがイエローを守るように着地する。
司令室からの指示だ。雪月花到着までまだ三十分以上。全員退避せよ。
ピンクの招集は中止した。人質を見捨てるのはやむ無し。捕囚は許されないから、逃げられぬなら華々しく散ってくれだと。
スパローが残るから全滅にはならない。だから私は最後まで援護する。ともに散って、ともに生き返ろう
二台のトラックの荷台から、下級どもが待ちかねたように飛び降りる。
人質を連れた中級と上級も――。
私服の男が助手席から降りてきた。
おそらく幹部クラス。