11 語るなかれ、聞くなかれ
文字数 2,320文字
……彼女がいなくなって、複雑な計算が出来なくなった。なのでシンプルに団員で均等に分けた。その頃になって俺もようやくレベルが上がりだした。
深雪が東京に行って悲しんだのは俺たちだけでなかった。ハワイアンランドでの戦いで、布理冥尊がぽつりと言った。
奴らも深雪のファンだったのだ。俺たちは彼女が上京したことを教えた。奴らのショックはひどかった。その頃から星空義侠団と東北布理冥尊は分かり始めた。
なまはげランドは深雪の卒業祝いに壊滅したが、ねぶたランド支部長の上島さん、チベットランド支部長の肥後さん、そしてここ北温泉ランド支部長のマサト中村さん。みんなと知り合いになった。親父がやっているきりたんぽ屋にも呼んで酒を交わす仲にまでなった。
ちなみに俺はそこの厨房で働いている。ハートや星型など色んなきりたんぽ作って、チョコ味やミント味つけている。けっこう人気の店だ
向かい合ってあぐらをかく野原宏がふいに言う。
あんたが知りたいのは先月の話だよな。七夕ランドの布理冥尊だけは、よその県と違っていた。東北制圧の拠点のため、当初から中央幹部が来ていた。親衛隊も二体いた。
レジスタンス本部は、仙台郊外にあるそれを壊滅するように俺たちに指示した。七夕ランドの布理冥尊は、東北残存戦力の集結を呼びかけた。どちらも東北の覇権を賭けた決戦のつもりでいた。
だけど俺たちにそんな気はなかった。連中が喜ぶために、なんで俺たちが戦う必要がある? なので、星空義侠団は熊退治が忙しいと拒否した。東北布理冥尊も七夕ランドの呼びかけを無視した。それどころか奴らと対抗するために山形に拠点を築き始めた。俺たちは当然手伝った。
ある日、七夕ランドの連中が秋田に攻めるとの情報を教えてもらった。俺たちは方針変更した。先に奴らを攻撃した。東北布理冥尊の一部も裏切ってくれた。七夕ランドの布理冥尊は壊滅した。
以上が、命令を拒否しながら命令に従った顛末だが、後日談がある。レジスタンス本部は、仙台に支部を作った。しかも七夕ランドの呼称を残してだ。そこから新しい布理冥尊を始めるようだ。噂ではない。東北の連中が加わるように誘われた。そしてそれは脅しになり、今回の実力行使となった。お前たちは本部のために俺たちを襲った。ぐえっ
藍菜が端末を一度押す。
レインホワイトが憤懣おさまらぬまま木畠茜音に戻る。さすがだ。厚手のセーターを着こんできている。
星空義侠団団長の逮捕に成功。彼らの裏切りを確認した。最終ターゲットである樹氷温泉では魔女が待ち受けていると思われる。なのでトリオザスーパースターとスーパームーンの出動を要請する。
このように本部へ伝える
野原宏が言葉を失う。その手に端末が現れる。
すでにハウンドピンクはいない。
俺でも分かる。終わらせるための戦いが始まるってことだ。戦場がどこであろうが、月が赤かろうが青かろうが、スカシバレッドは先頭で戦うだけだ。
裏切り者は端から消えろ。そういうことだ。