仮面ネーチャーのバイクすなわちネーチャーバイクが廃墟の窓ガラスを突き破る。
用法が正しいか未確認のままだが、スカシバレッドも続く。
戦闘員たちの悲鳴。スカシバレッドは冷血呼ばわれが固定している。
仮面の二人は車上からの蹴りや投げ技だけで戦闘員を抹殺していく。たまにバイクで轢いたりする。
……! 野生の感。
浮かぶスカシバレッドが二人を導く。
大型バイクが階段を駆けおりる。
大浴場であった跡地をヘッドライトが照らす。私服の布理冥尊が五人いた……。
ボブのヘアスタイルの与謝倉凪奈が俺をにらむ。……こいつは補助系の豆柴犬。
窮余の策。やはり花は離脱した。焼石と諭湖の推測は当たりだな
シニカルな口調の青いシャツに眼鏡の色男は蒼柳。ウィローブルー。生身の状態でスカシバレッドを連れ去ろうとした奴。この子を色欲の目で見た野郎。こいつこそ危険だけど。
でも、こいつは雪と組むと思っておりました。申し訳ございません
押部諭湖。つい先日、相生智太と並んで歩いた女の子が頭を下げている。こいつも敵だが。
ずんぐりした小柄でショートヘアの女が笑う。その足もとに一般人男性が二人転がる。傭兵さん……。顔が腫れあがっている。
女がビキニ姿になりさらに力を込める……。こいつじゃない。
捕虜の前でしゃがんでいた男が立ちあがる。190センチメートルほどの巨体。灰色のラガーシャツ。ラフな長髪。
スカシバレッドを獲物として見る。暴力と邪悪な匂いが漂う。
こいつだ。
小柄だった女は巨大化して、二本足で立つウナギの異形と化す。
蒼柳はスカシバレッドを見ている。
与謝倉も睨んでいる。
押部諭湖も見つめている。
仮面ネーチャーがバイクから降り、横に並ぶ。
二人から緊張が漂う。
大司祭長はおられない。俺たちは、蒼柳や与謝倉など本宮中枢を守る役目も負った。
なのであの方がいなくても、この姿になれる
男がずけずけと俺たちに歩む。 男が体に力を入れる。その体が――。
スピネルソードをクロスさせる。男が吹っ飛ぶ。
スカシバレッドは速さだけではない。獲物が獲物に飛びかかる。もっと強烈な技。
この子の叫びが大浴場に反響する。男をクロスに切り裂く。
スカシバレッドに顔面に蹴りを入れられる。
さらに。
スカシバレッドが倒れ込むように切り裂く。
門番だかの巨漢の男が戦うことなく消滅す――。
大浴場に沈黙が漂う。露天風呂へのドアが風でバタンと閉まる。
実戦不足だな。
スカシバレッド。あいかわらず美しきワルキューレ。私もお前に生死を定められたい。
だがエナジーをだいぶ消費したな。もっともっと減らしてくれ
見ているだけだった与謝倉が、ツインテールになっていた。つまりマントで体を覆って精霊と化した。
仮面ネーチャー、出遅れたな。もはや合体できまい。
ザマア
闇の中、ざまあと笑う。
なんだと? 伝説というべき合体の瞬間を楽しめるよう、あえて考えぬようにしていたのに。心をピュアにしておいたのに。その心へとネタバレしやがって。
諭湖は凪奈様を守れ。我々が不甲斐ないから、あんな奴らが来る羽目になった
滑里さん、いやヌメリイヌ。この陣営にテロリスト実質二人だけで挑むはずございません。こいつらは時間稼ぎかと思われます
そんなの誰でも分かる。
スカシバレッド。私は育ち盛りなの。レベル180を越えたら、宴の後の結界に仲間を巻き込まなくなった。諭湖も蒼柳も精霊になれる。
それに
その体が……薄紅色のアフガンハウンドになる。……長い毛並み。気品さえある。
蒼柳様は捕虜を連れ帰るべきかと。……混沌が待ちかまえております
黒いビキニ姿。棒みたいな体を恥じらうようにスカシバレッドから逸らす。さらに力を込める。
つまり、自分たちも連れ帰してほしいのか? だが私はまだ戻らない
眼鏡が消え、焦げ茶色のシャツになっただけ。でもウィローブルー。精霊と人の中間。
二人は合体できなくても、先ほどの破壊力あるキックのように合体技はだせる。本部の広報(今後は端末に配信される。以前はモスウォッチの小さい画面かモスプレイの大型ビジョンでしか見れなかった)に書いてあった。
アフガンハウンドが俺へと飛びかかる。ソードを向けるのを躊躇する。とりあえず首を掴む。 捕まえたけど。