03 大森で柚香とデート
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結局、俺と柚香、陸さんと夢月、清見さんと蘭さん、でおさまった。
藍菜の推測だと、グリーンを見つけるのは端末に頼らず野生の感で夢月。確保までは彼女にやらせる。そこで陸さんが必殺持ちネタのオネエ芸人の真似をして夢月を抱腹悶絶させて、その隙にグリーンを広尾に連れて帰るそうだ。夢月に追われたら、俺が見つめたり抱きしめたりして引き留めるらしい。
父は妹夫婦の墓前に、あなたたちの子どもは元気に育っているよと報告に行く。娘だった桧も一緒に。
母親の言葉に従おう。母は、俺が妹に添い寝しているのを発見して、間違いを起こさないでと切願した。妹相手に間違いを起こすはずない。本当は従姉妹だとしても、それでも法律的に結婚を許されぬ相手に。調べてはないけど。
大森は川崎の遠い親戚だと思っているだろうけど、れっきとした東京なのでリスペクトするように。
米軍が中東砂漠で使用する濃度のサングラスを絶対着用と花より』
昨夜、司令官じきじきにSNSで指示が届いた。大森は蒲田の親戚だ。それくらいは知っている。
京浜東北線でサングラスをしてうつむく。
おそらく柚香は俺と目を合わさぬようにそっぽを向くだろう。そして、
柚香と深雪。女の子は髪型でイメージが変わるよな。しかも彼女たちの場合はバストがAからDに変わる。欺瞞の魔法でスタイルを変えるのだから、俺だって欺瞞の力をちょっと使うのは仕方ない。子猫の柚香と清楚の深雪。仲が深まれば二人と交互に……。
正義の味方だからって倫理観が強いわけではない。お互いが合意すればいいだけだ。
指示された地点に五分前に到着したら不審人物がいた。
日傘を頭に当たるほど低く差し、周囲を監視するためにか三十秒に一回それを上げる。
深くかぶった赤いバンダナとビリビリショートパンツは見覚えがあるけど、白色のタンクトップから見える肩が華奢で愛らしいけど、声をかけるのを躊躇してしまう。
頑張って声かける。
柚香は跳ね上がるほどビクリとしたあとに。
低い声で言う。その手にはスタンガンが握られていた。
だが夢月が『蘭ばかりずるい! 私だって智太君と会いたいのに任務だから我慢しているのに! だったら模擬戦で決めよう! 勝った人が智太君とデート!』などと騒いだため、お前どもの言い分に従う羽目になった。
一月たつのに、夢月から相生ウイルスが抜けない。二度と私にうつすなよ。下手すると、花と月に一回ずつ殺される
フェイスガードは堪忍してもらい、黒い布マスクだけをつける。俺の手に端末が現れる。
いまは大田区全体を覆っているが、近づけば色が濃くなり勝手にズームされるらしい。ちなみに月チームは洗足池、花チームは田園調布を探る。
徹底的に追いこんで、私たちが手柄を取るぞ
大森は警察が多く感じるのは気のせいだろう。俺が職質を受けて、道の反対側を歩いていた柚香が、私たちは日焼けが苦手なんですと助けてくれる。若い婦警がいたから顔をさらさずに済んで助かった。以後は並んで歩くことにする。
亀甲隊の女性隊長はおそらくFカップ。下着を装着せずに黒い密着したスーツを着ていたから、形状も先端もはっきりと覚えている。でも。
亀の隊長は距離があったから肌は日焼けぐらいで済んだけど、それでも全裸になった
それはもはや補助攻撃とは言えない、なんてどうでもいい。俺へ身構えていない、この声だ。あの美女の素っ裸よりも、いま横にいる彼女の顔を見たい。本心。病室で削れきった体を寄せあった二人。こんな距離に戻させるはずがない。