２２ 夜明けの俺
文字数 4,107文字
休息無し。ただただ純度百の怒りでできた精神エナジー……。胡蝶蘭はすべてを見抜く。
ようやくリビングへ通される。
傭兵たちが二人捕まり、ネーチャーとトリオスで救助しました。
五人衆と門番と執務室長と百夜目鬼が現れたけど、夢月がＵＦＯを消滅させました。
親衛隊に返り討ちされて、ブルーがハデスブラックに食べられたそうです。
他もみんなレイブンレッドにやられて柚香は叛逆者になりました。
雪月花端末がなくなりました。
春日が蘭さんに化けて俺の部屋に来たので、夢月がとどめを刺しました
蘭さんは黙りこむ。ずっと黙りこむ。
雪月花ではない端末を手にだす。それへと、
通信を終えた蘭さんがソファにもたれかかる。
一番重要なのは柚香の件。
あの子に非はない。稚拙な作戦で罠に飛びこんだ。本部と夏目の失態を被っただけだ。だから我が身に代えても庇う。
二番目は春日の件。三番目はサント号の件。
あの馬鹿は、一晩に仲間を二つも倒したのか？ 私がいなくなるなり？
何か起こすと思っていたが次元が違う。誰も庇えるはずない
これをあの子たちに渡してくれ。お前もまた持ってほしい。ここに転送できるようにしておく
半壊した部屋に転送と思ったら路上に現れた。時間が早いから人に見られなかったけど、もうバイクごと転送は使わない。玄関前にバイクを引く。
桧はでてこない。俺も声かけない。
夢月は制服をしわくちゃにして、まだ柚香に抱きついていた。めくれているし。
柚香はうなされていない。顔色も悪くはない。
俺は夢月の頬を軽く叩く。
じゃあね。何かあったら連絡してね
柚香は夢月でなく俺に助けを求めた。だから柚香は絶対に守る。夢月も危うい立場だけど、俺よりは強い。ともに闘う。
でも俺が今からすべきことは、清見さん。……だとしても、あの二人に伝えないとな。気が重くなる。
まだ怖くなさげなアグルさんに連絡する。
……いつからだ？』
自転車以外の人生初の二輪車運転。十秒でコツをつかむ。
広尾を目指す。
位置情報を形だけでも消さないと、藍菜に迷惑がかかる。
記憶を頼りに早朝の町をさまよい、二十分ほどしか迷わずに広尾の低層マンションに到着した。わざと離れた場所から歩く。五時四十五分ならば起こしてＯＫだろう。
ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､
ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､
ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､ﾋﾟﾝﾎﾟﾝ､
本部からの通信をまとめて確認した。
智太君がパックと会ったのをリークしたのは私。昨日清見さんに相談したから理由は知っていた。
スカシバレッドは報酬の力を利用して布理冥尊をたぶらかしスパイに仕立てました。
あなたを擁護するためにそう伝えたはずなのに、湾曲しやがった。それほど本部は頭に来ているみたい
欺瞞の力の取りこまれたうえに、本宮に尋問されるかもしれません。その前に助けるべきです
でも私の家で拷問はさせない。それに、嘘をつかまされるだけ。
どうしてもというなら、仮面のアジトに連れていけ
……彼女を慰められるのならば、特例としてメンバーの居場所を教える
涙顔で必死に首を振る。きつい展開。
彼女の猿ぐつわをはずす。
トイレに行かせてください！ 半日以上放置なんてひどすぎる
手錠もはずす。へっぴり腰で部屋からでて、落窪さんにつまずき転ぶ。それでも彼女は漏らさなかったし、落窪さんも起きなかった。
……切羽詰まっていたからか、簡単に情報を入手できた。
部屋の外から紗助君が覗いた。疑るような目。
監視しろよ。逃げられたら、俺もとばっちりを受ける。
何かあったのか？
トイレを流す音に続いて、彼女が現れる。疲れた顔。俺の顔を見て不愉快そうになり、俺の手もとを見て両手を上げる。
だまされるところだったのか。……こいつは敵。疑わないと。
撃つ気はないけど、銃を彼女の顔に向ける。
だとしたら清見さんが住む町。
岩飛が顔を逸らしつつ何度もうなずく。必死な態度がかわいい。背丈があるからユーモアに感じてしまう。
