１５ まだまだ秘密会議
文字数 3,439文字
中学生を拷問するのは、レッド二人が猛烈に反対した。
蘭さんは柚香に意見を求める。
ぐひひひ。私などが意見を口にしてよいのならば
この子はまだ若いです。善の心は蘇るでしょう。本来ならばあなた様が保護なされるべきですが、義務教育でしょうし親御さんもいるでしょう。
解放してやるのはいかがでしょうかね？
ただし何もないと本宮に疑われます。このアジトの情報を与えましょう。あの子の偽りの功績になります
身中の虫と思われるぞ
こいつは相生に惚れている。スパイに仕立てられる！
さすが茜音っち
落窪さんはスカシバにクリーンなスマホを渡してください。その電話番号とアドレスを穴熊パックに残しましょう。
『僕は君を守るために云々』と、受けとった少女が涙する文章を私が書く
宅配の当日便で彼に送ります。猟犬が関わる間は、何より最小限の動きが必須です、ぐひひひひ……
夢月が睨んでいた。
スカシバレッドは彼女にやらかしたっけ？ 自分よりかわいいと妬いているのか？ 汗でおでこに前髪が貼りついているのさえ、悔しいけどこの子よりずっと……そうだった。
私が自分にそんな目を向けると思いますか？
鏡を見てきます
ここにいる顔を見たら本部直行してもらう
穴熊を開放するのはガールジャーに任せるが、スマホの中身は調べておきたい
蘭さんが膝に頭を乗せられた夢月を指で示す。
人のスマホに魔法でアプリをインストールできる超越ハッカーだ。
茜音が奥の部屋に行く。薄地の白系パジャマだから紺色の下着が透けている。寝るときもブラをする系か。コンディションがいいので気にならないのだろう。
諭湖の所持品はスマホと千二百円入った財布だけだった。身分につながるものはなし――思いだした。
それはさすがにかわいそうだ。
どこぞのチームと違い、我々はメンバーにやさしい。しごきなどしないしな
その手から万札は消える。
私が貸した金だ。
どこぞのチームと違い、我々はすべてを迅速かつ几帳面に処理する
また殺伐した空気が流れだしたところで、茜音がスマホを持って戻ってくる。
夢月、パスワードを解除してくれ
どうしたの？ とっくに立ちあげたよ。私三日ぐらい寝てないからちょっと眠るね
どれどれ。
これは一部で熱狂的人気のお二人だ。だが、ここまで露骨なのは見覚えがない。だとすると自作だな。さすがは親衛隊だ。
茜音っち！ この子は私のフォロワーだ！ 全作品、作者もだ。しかも狂った応援コメントを残す奴だ。命を大事にして正解だった。
……でも自作小説はまだまだ中学生だな。五行で分かる。さすがに評価できない
俺の手刀でなく、彼女の薬が合わなかったことにしよう。
なんとシルクは電話にでた。弱弱しい声だったけど、やっぱりあの人は強い。でも、さっそく腕毛が生えてきたみたい。はやく悪を倒して女性ホルモンを授かりなおしたいって
病室のベットでの柚香の寝顔を思いだす。その吐息も。
カフェの入り口で抱きあった夢月の吐息も思いだす。その瞳も。
踊り場で背中合わせの二人を思いだす。
そんなメンバーが揃うアジトから、いかに穴熊パックが抜けだしたのか、もしくは敵を追いはらったのか。その壮大なストーリーも考えておくと言うけど。
お前たちはのんびりしすぎだ。私はあと二日休みだが、それでも学生や無職に付き合いきれない。
ちょっと遠回りしてパックを青山の墓地に捨てましょう、ぐひひ
じゃあな
狼男に変わった落窪さんが諭湖を肩に背負い、藍菜と一緒に去っていく。スカシバレッドと夢月だけになる。
連休中のビジネスビルの静寂。
その姿が
紅月は二人きりになるのを待っていたかのようだった。
柚香の写真は赦したくないけど柚香だから赦す。消去しておいたけど。
でも貴様の写真が隠しフォルダに大事に保存されていたのは赦せない。しかも屈んで胸を見せつけたり、くねくねした格好をしやがって……。
すべて消去してやったけど。完全に。二度と復元できないように
