11 真・江東区で知る現実
文字数 3,553文字
読み飛ばされるのは仕方ないが、お前はちゃんと聞け。
などと改稿前は息巻いたが要約するぞ。ちゃんとに読みたい者は小説版をご覧ください。
・布理冥尊の一部が相手を喰らうようになってきた。我々の精神エナジーを奪い、我が物にするためだ。
・それに堕ちた異形は尋常でないレベルアップをする。悲惨な目に遭わされた方々のレベルは、十分の一になった。
・その死は精神エナジーの枯渇によるものでない。精神エナジーの強奪だ。生身に戻っても長く廃人同然になる。
顔つきが怖いぞ。かっかとするな。ここまでの話は前座だ。茶番だ。今から言うことは、何があっても他言するな。柚香と夢月……、夢月だけには言うな。お前こそ冷静にな。今以上に熱くなるならば話さない。
榛名山山麓でともに戦ったから知っているだろうが、奴らは精神エナジーの強い一般人を強制的に入信させようとする。でも、我々に助けられた人々を改心させることはできない。
布理冥尊は、そのような人々を襲いはじめた。生身の体にある精神エナジーを我が物にするためにだ。
その人たちは行方不明者として処理される。
憤慨するなと言っただろ! 座れ!
私だって冷静を装っているだけだ。
悪人の集まりである布理冥尊でも、すべてが人を捨てたわけではない。だが、ごく一部にそのような悪魔が存在する。そして、そいつらはさらに邪悪な力を手に入れる。
五人衆のマンティスグリーン。親衛隊隊長のハデスブラックなどだ。
関東管轄からも、雪月花、仮面ネーチャー、それにお前が参加することになるだろう。関西からは、もう一人のレッドも。
その日まで耐えろ。まずは邪悪な敵をひとつひとつ倒すこと
あなたは本部と密接みたいですね。組織のことを教えてください。
モネログリーンがどこにいるかもお願いします。
別件ですが、今日の戦いで俺も近衛エリートを数体倒しました。その分をきっちりと精算してください。本部にストックしてイエローに渡します。
そしたら俺は帰って寝なおします。魔法で家まで送ってください。
昼から何も食べてないので、あるものでいいのでください
だったら省略せずに話してやる。
私たちは報酬の取り分を細かく計算する。それをするのは深雪だから、しばらく待て。ただし今回の分はシルクには渡せない。死んだということは離脱と同じ扱いだからな。
本部のことで教えられることなど少ない。緑モスに関しては、私こそ知りたい。
我々レジスタンス組織に正式名称がないことは知っているよな。それは組織のために戦うのでなく、布理冥尊を倒し日本の平和を守るために戦うことを表している。組織の名のためでなくな。
そうは言っても、てんでがばらばらに戦っても
組織で言えるのこれぐらいだが……、そうそう櫛引博士から連絡があった。相生ウイルスのワクチンみたいな試作品ができたらしい。お前の報酬は消せなくても、それが実用化して日本の総人口の半数分確保できたら、お前もサングラスをしなくて済むな。
仮面の二人が追っていたのは伊良賀だったのか? 当初からマンティスグリーンだったのか? もはや分かりようもない。花蟷螂の擬態は恐ろしい。異形となり伊良賀に化けていたのを、私の蝶たちは見抜けなかった。闇の女王など呼ばれやがる夜桜の特性が関与していたとしても、蝶たちは精神エナジーをまとった擬態を生身の人間と判断してしまった。
罠にまんまと嵌まってしまったな。紅月も判断がずれたらやられただろう。親衛隊隊長はおそらく飛び入り参加したのだろう。おのれの欲望のためにな。
仮面ネーチャーに借りた端末から、伊良賀の反応は消えた。モスガールジャーとの合同作戦は中止だ。お前らだけで一から探すことになる。真面目にしないと懲罰で霞ケ浦のヘドロすくいをさせられると、夏目に伝えておけ。
しかし
……ハウンドピンクがいたと聞いて気にし過ぎたかもな
父が海外に単身赴任で、母と妹の三人住まい。無理して作った狭い庭。自部屋は二階の南向きの六畳間。ポスターも貼ってなくて殺風景。猫を一匹と、玄関に金魚を二匹飼っている。水替えは月二回。
高一の妹が実は従兄妹ってことも知っているし、お互い様にしてやる
蘭さんは怒りを飲み込み、俺を最寄り駅まで送ってくれる。歩いて四分だけだと知っているけど黙っておこう。碧菜の住まいを聞かれたけど知らないと言い張る。自白剤は打たれなかった。
陸さんの住まいなど知らないそうだ。
祖母がマンション三つ持っている一人っ子なら、弁償してもらうに決まっている。どうせ始発まで数時間あるし、さらに一万円借りてタクシーで帰ることにした。領収書があれば、後日雪月花が払ってくれるそうだ。会計係は柚香とのこと。俺は同じ過ちを二度繰り返さない。そうしないと今月の小遣いが赤字だ。
蘭さんはお姉さん二人を介抱するので、その場で別れる。この時間でもタクシーがあるらしいJR駅まで十五分も歩く。うつむいて三分待ったらやってきた。