22 ちっぽけな俺に気づいてくれる人
文字数 3,606文字
でも、ここは点在する集落と迷いこんだら出られないような自然。この一帯を捜索するには、奴の野生の感が必要だね。
何より奴がいれば、五人衆とお付きの親衛隊がいても対処できる。ガセだったら奴のせいにすればいいし!
彼女はライフワークを布理冥尊の陰謀により潰され、以後機嫌が悪い。どんなに大金を得ようと人はそれだけでは幸せになれないって奴だ。俺だったら合わせて十三億円当選したら満足できるけど。
同時に茜音の上にピンポイントで白い渦が現れる。
彼女はどこかに転生されることなく、白いオウムに変わる。
でかい羽根で夢月の頬を叩かぬように注意しながら、アメシロが彼女の肩に乗る。
制服少女が先頭で歩きだす。
ついでに落窪さんから宅配されたスマホを、夢月に魔法で傍受を除去してもらった。
サングラスをはずす。美女二人といれば適齢期の女性ですら俺をあきらめるだろうし、そもそも人が歩いていない。
柚香も日傘だけになり、バンダナさえもはずす――。
あらためて見るとほどよく色白だな。最初はぎょっとした金髪ショートも、慣れてくるとトレードマークだ。似合っている。かわいい。
でも隣の制服姿が反則だ。白シャツに赤いリボン(自前らしい)、紺系チェック柄のスカート。赤茶色のストレートロングの艶。
王道がオウムを乗せて田舎道をずんずん進む。目が合うとにこにこ笑う。
深雪と紅月が一緒なのは修羅場で見かけた。でも柚香と夢月の組み合わせは初めてだ。
俺は二人をちらちら見る。
柚香は『学年で一番かわいいかな』のタイプ。垂れ目好みも好みそうだ。
一方の夢月は『東アジアで一番かわいいかな』のタイプ。
そんな表現を前もしたと思うけど、実際に。
ミカヅキに乗せてもらったときに、スカシバレッドへの対抗心からか、規格外のことを教えられた。
でも中身なら柚香かな。茜音は彼女を二重人格なんて言うけど、キャラによって口調を変えるは俺も同じだ。だからやがてウマが合う。
たしかに異常なまでの警戒心があるけど、
蘭さんと夢月に露骨に媚びたりするけど、
茜音がオウムになったときに指さして涙して笑ったり、
陰で夢月の悪口を並べたり、蘭さんが不機嫌だとこそこそしたり、
なにか頼まれそうになると『結界張るの大変』みたいに忙しいふりをしたのを目撃したし、
隼斗が話しかけても『レベル100未満が』みたいな顔をしたし、
二言目には自分の大学の話になるし、
お笑いとかの話題をふってもついてこれないし、
すぐに『下劣が』みたいな顔をするし、
訛りがたまにでるし、
貧乳だし……。
それでも『うん! うん! よく分からないけど、天上天下私だけが正義だよ』な女の子よりは扱いやすい。一緒にいて命の心配を感じない。
夢月はわがままだし、
おさないし、
胸も大きくないし、
正直に言って…………馬鹿っぽいし。
その点、柚香は俺より利口だけど俺より弱い。おそらくレッドが本気で戦ったら、彼女の補助攻撃は何一つ通用しない。つまり守るべき女の子だ。
でも夢月の眼差しを思いだすと、すべてが堂々巡りになる。
……なんとなく感じていることは、もし俺が告白すれば、どちらもきっと
夢月はすでに二人はできていると思っているし、
柚香はレベル160未満だし。
柚香とオウムが言うのに、公園にある上を向いた蛇口のように、容器から中身が飛びだす。夢月は一個分ぜいたくに使って目を洗う。
そして俺を見る。生死の境目。
柚香の肩にアメシロが乗る。羽根で頬を思いきり叩き、画面を覗く。
深雪が微笑みながら見おろしてくる。
俺は上空10メートルに待機するそれへとピンクを抱えようとするけど。