11 超越紅色
文字数 3,113文字
こいつは俺の目をまっすぐに見つめるけど。
闇落ち? カスのグリーン?
茜音たちはなにも教えてくれていない。
深雪に言い返したあとに、俺へとまた微笑む。
その体からスカートがずり落ちる。セーラー服がはだけ落ちる。
いそいそと着替えだす。
敵も味方も彼女の行動を妨げない。
……お待たせだね、巨大うじ虫。分かっていると思うが、あんたらが生き残る
全員揃ったからあらためて名乗らせてもらおうか。あたいは雪月花の仕切り役。紫苑太夫だ。女郎の姿を気取っていようが、今の世であちきなんて、小っ恥しくて使わないさ
緑色の発光が消える。
学校指定の紺白ジャージへと着替え終わったばかりの紅月が、赤色の光に包まれていく。
赤い
違った。歌いだす。
私こそが真打ちの、夜空に浮かぶ紅月照宵。
本名の
なんなら住所もSNSも教えてやろか? どうせお前ら歌い終われば消滅だしな。
悪しきハートが消えて喜べ。私がいつか本宮だってぶっ潰してやる。
かぐや姫のコスプレらしき彼女は前髪ぱつんの長く垂らした黒髪で、しっかりとメイクしている。赤い口紅が際立っている。変身した竹生夢月よりスカシバレッドのが瑞々しくてかわいいかな。なんて思うけど、こいつは全身がかすかに発光していて、ステージでただ一人スポットライトを浴びているかのように、その容姿を闇に浮かばしている。
紅月が右手を広げて前に突きだす。
彼女の手から三日月型の紅い光が無数に、いや甚大に飛びだす――。
人質がいるだろ!
驚愕する糞エリートの顔が切断される。伏せて逃れようとした上級の背中がずたずたに切り裂かれる。下級など光が横を通過するだけで消滅していく。
人質たちに向かった光の刃は、縛りつけた縄だけを切る。彼女たちが丸太棒から落ちていく。俺は救出に向かおうとするけど。
紅月の声とともに人質たちの姿が消える。
一瞬だ。敵も救うべき人もすべてが消えた。巨大な芋虫以外は。
こいつには紅い光はひとつも向かわなかった。
吐きだされた煙は紫色で……、宙に漂いながら膨らんでいき、
紫の大蛇を引き連れて、二人は微動だにしないコケライトへと歩いていく。
知らぬ間にバイクにまたがっていた竹生夢月が空へと拳を向ける。
漆黒のモスプレイが音もなくいた。発したサーチライトが闇に浮かぶ三人を照らす。
竹生夢月がヘルメットをかぶる。エンジン音とともに去っていく。
茂羅の最初の悲鳴を聞きながら、俺はモスプレイへと飛んでいく。林越しにバイクのライトが遠ざかるのが見えた。
紅月の靴と制服を抱えたままだった。
シートに座るブルーに説教される。コスプレしたエロい女教師みたいだ。人質だった人たちは毛布をかけられて床に寝かされている。アメシロがモニターの前から顔を向ける。なるほど止まり木があるのか。
一石二鳥だ。トリダケニ
俺へとサムズアップする。修羅場が一段落したからか、隼斗も呼びだされていた。
本来ならば三等分だけど、イエローは離脱したからほかの二人の半分。だから……、ブルー計算して
まだだろ、問いただしたいことが群馬の山ほどにある。
なのに意識が薄れていく。
妹の声に起こされる。
俺は自分のベッドで熟睡していた。
高校一年生の桧がパジャマにエプロンをかけて、愛くるしい顔を赤らめている。
紅月の制服と靴を抱えたままで、相生智太に戻っていた。