28 深川蘭

文字数 1,531文字

省略しないから覚悟して読めってのは、改稿前。

省略しまくるので真面目に読みたい方は小説版をどうぞ。

単刀直入に言うと、私はできてしまった。

“蘭ちゃん一緒になるしかないね、今よりずっと幸せにするよ、僕は子どもが大好き”

笑いやがったが許す。

産み育てる以外に選択肢などない。なんとなく予感がしたからタバコをやめた。アルコールもやめる。


妊娠したまま戦えるのか、ひとつの体にあるふたつの魂は変身でどうなるのか、櫛引博士に聞いた。

『前例がない。その意味は分かるか? 正義の味方で結婚した人は多数いる。でも、妊娠して戦った前例はない。みな個人が決めた』

 そういうことだ。私の正義の味方人生は、たったいま終わりだ。これからは、ひとつの魂に愛と力を注ぐ。


 ……でも涙が止まらない。


 柚香。夢月。そして雪月花。


 私が鍛え育てた最愛のチーム。それを見捨てる。遠ざかっていく。

“大丈夫ですよ、へへへ”

 柚香……。

 優しい子。純粋な子。そこまででない攻撃力のくせに幹部二体と戦いきった、土壇場に強い子。そんな子と力を合わせ戦うことがいきなりなくなった。もう彼女の祓いを受けることなく、彼女を守ることもなくなった。涙が止まらない。

“うん、うん、うん!”

 夢月……。規格外。超越かわいい。ちょっとだけ馬鹿。天真爛漫。異常なまでの身体能力。歌姫。ダンスは神の域。直感。


幼いころに何かあったのか男に構えている。そのトラウマからか容赦なく敵を追いつめる。そのためか強い敵から逃げる逃げる。怒れば制御不能。私以外は、になっている。ほんとは私にも無理。本部が恐れるのは……善悪の境目。


でも優しい子。純粋な子。ほがらかな笑顔。もう戦いであの子の笑みが見れない。怒ることもできない。癒されることもない。

だけど私は涙を飲みこむ。母親だから。いつまでも泣くのは、この子に申し訳ない。

ヒヒヒ……

原理主義……。あの二人で戦えるはずない。誰に託そう。あの子たちと同格に戦える戦士なんていない……。

一人いた。

ジー

相生智太……。

数戦目のレベル30が中央幹部を倒した。しかも死んだ直後に。レベルが後追いする存在。

だとしても超絶論外。胸ばかり見ている。何考えているか分からない系の無口。布理冥尊であろうと子を成敗できない、飼い主に似て視野の狭い正義。


……優しい目と言うけど、胡蝶蘭は先日見抜いた。隠された強い目、怖い目……。本宮にひそむ魔女のような冷血な眼差し……。融通効かない正義のためにすべてを差しだす。すべてを赦さぬ。

あんな奴にあの子たちを預けない。道連れにされる。

夢月の目を覚ませられないのが無念。柚香の目が覚めたのだけ安堵。


 もういいや。私は前線から立ち去る存在。あの子たちには今後の方針が決まったら、それから教えよう。

『蘭! 蘭! 応答してよ!』
『深川さん、何かあったのですか?』

イレギュラーに戦闘が始まったみたいだ。柚香も本部も慌てていたけど、もはや何もできない。何もしてはいけない。だから通信を切る。

五人衆ぐらいなら夢月がいれば平気だ。それに夏目がいるならば。


あのくじら雲は、人をゆるし守ることだけが正義と勘違いしているから。だから焼石は去っていった。おのれとチームは犠牲にする。でっかい雲もいずれ消える。



吉原がCEOするベンチャー企業もでかい。それでも結婚パーティーは一度きりにさせる。人数など削りまくって控えめにさせる。仕事絡みと言われようが、それだけは譲らない。私は目立てぬ存在だから。

その場所に、あの二人だけは必ず招待する。隅にちょこんと座る二人――。


よけいに涙があふれだす。

……ウウゥ


みんなはお母さんより強いから、心配しなくていいからね

 産婦人科のベンチにいつまでも座ったまま、深川蘭はお腹をさする。
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登場人物紹介

相生智太

=スカシバレッド

スカシバレッド

=相生智太

清見涼

=エリーナブルー

エリーナブルー

=清見涼

睦沢陸

=シルクイエロー

シルクイエロー

=睦沢陸

壬生隼斗

=スパローピンク

スパローピンク

=壬生隼斗

夏目藍菜

=与那国三志郎

与那国三志郎

=夏目藍菜

木畠茜音

=アメシロ

アメシロ

=木畠茜音

陸奥柚香

=白滝深雪

白滝深雪

=陸奥柚香

竹生夢月

=紅月照宵

紅月照宵

=竹生夢月

深川蘭

=紫苑大夫

紫苑大夫

=深川蘭

相生桧

=智太の妹(従妹)

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