七三ゆきのアトリエ
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紅月の野生の感でなくても分かる。十三夜以上に頼れなければ、三対三であろうと勝てない。生き延びるのは奴らだ。
だ、だめだ。おなかに赤ちゃんがいる。どんな影響があるか分からない
瞬間コンボ。紅月が蘭さんを乗せて壁の穴から、横浜港上空の青い空へと飛んでいく。俺と深雪を置いて――。俺たちも逃げないと。
蘭さんが転げ落ちる。おなかを抱える。
その体が浮かび上がる。
お姫様は私と戦いなさい。勝てたなら、花嫁を解放します
生身で魔法を使った百夜目鬼の手に、白いマントが現れる。
太陽の色は白。その光を浴びた月は青色。真なる後継者が現れたのを感じました。なので惨めなお姫様。あなたは不要です
紅月が宇宙くノ一となる。ネーミングを再考してほしいが、それどころではない。
これからは智太君だけを強める! それに早く終わらせないと、蘭が
蘭さんは青白い顔で歯を食いしばっている――。その手に雪月花端末が現れる。
白い魔女が浮かぶ蘭さんへと手のひらを向ける。
蘭さんが気を失う。
怒り。俺たち四人のとてつもない怒りを感じた。
四人?
私さあ、テロリストで蘭さんだけは好きだったから。……もう一人いるからさあ、だけじゃないけどさあ
レイヴンレッドは焼石嶺真に戻っていた。この季節にいまだ白Tシャツだが、それどころではない。
だからさあ、病院に連れていく。邪魔するならば、あなただろうが倒す。
とお!
焼石はジャンプして蘭さんを抱える。泰然な態度でドアへと歩いていく。
あなたは生粋の信徒よりも従順でした。一度だけ赦します
スカ、こいつを倒して蘭を連れ戻す。私もカラスを信じるけど、なんか悔しい。
黒岩が顔ださないから三対一だ! 二十六夜、二十六夜!
紅月の手にルビーソードが現れる。 片手で弱い月明かりを放ちながら、白い魔女へと向かう。
魔女が右手から閃光を放つ。
紅月が吹っ飛ばされる。壁にめりこむ。
こいつめちゃくちゃめちゃくちゃ強い。やっぱり逃げよ! 敵前逃亡!
紅月が白色の光に包まれる。
その光は壁を傷つけない。紅月だけがいなくなっていた。
これであなたたちは祝福に包まれました。この楽園からは一人しか逃れられません
あなたたちが戦う相手はハデスブラックです。私は偽りの紅い月を成敗できただけで満足です。
ご機嫌よう
私まで閉じこめられた。この姿でどう生きればいい。地中で過ごせと言うのか?
黒い悪魔が床から顔を覗かせる。……悪魔ではない。露わになっていく体は、フロア全体を占めるほどの巨大すぎる、首の長い黒い亀。甲羅にトゲがぎっしりと生えている。
俺たちへと凍てつく反動を吐く。
深雪の結界が二人を包む。神楽鈴を鳴らす。
醜悪な玄武が俺たちへと赤い目を向ける。
私はとっくに狂っている。
楽園の中でお前たちを食えば、私は祝福に背き完全に消滅する。……これ以上強くなれない。あの方を越せない。そういう呪いをかけられた。
だから、お前たちをただ殺すだけだ。道連れに、巻き添えに殺すだけだ
おのれへの絶望さえも力にする。こんな奴と戦えない。それよりも紅月……夢月はやられたのか? 生き延びたのか? それよりも。
そうだ。かりに私を倒しても、お前たちは殺し合わないとならない。……永遠のユートピアなど存在しない。この楽園も一時間後に太陽に飲み込まれる。その時ここに残る精霊の力は、完全に消滅する
深雪がスカシバレッドの手を握ろうとする。
あの魔女は嗜虐だ。いつか倒してやる。そのためには、こんな化け物と戦っていられない。だらだら戦って勝てるはずない。
俺が終わらせる!
深雪にそう言って、スカシバレッドは亀の化け物へと飛ぶ。
亀が蛇のように首を伸ばし、スカシバレッドに噛みつこうとする。毒牙がずらり。その中は。
馬鹿め。
スカシバレッドは逃げない。真正面から口へと飛びこむ。
暗闇。でかすぎる牙が突き刺さる。貫通して切り裂かれる――。猛毒だ。瞬時にしびれていく。
だとしても。
レベル200を越えて出せるようになった高位の十字。燃える正義の赤を頭上へと叩きつける。
真っ暗闇。ハデスブラックが悶絶する。スカシバレッドは血を嘔吐する。
だとしても。
更なる正義のXが闇を赤く照らす。悪魔の獣の口腔を破る。スカシバレッドの体は酸のごとき唾液に溶けていく。
だとしても。