２７ 見おろすビルと見上げるカラス
文字数 2,766文字
焼石嶺真。レイヴンレッド。
こいつと二人だけならば刺し違えてでも倒した。倒せるかどうかは置いといて、そうなると茜音が敵とともに残る。いまの彼女はアメシロにすら転生できない。オウムよりは強いか。それでも弱い。
江礼木が端末を消す。
誰が来る？
漫才を始めるな。……猟犬に来られるのはうまくない。時空を越えて追跡できるあの子こそ、布理冥尊の切り札。
だとしても面前の敵を倒すだけ。茜音が盾となる向こうにいる女を――。
焼石がふいに空を指さす。
ぐえっ
げほっ
くの字になったところを頬に衝撃。サングラスが吹っ飛ぶ――サイドから蹴り上げられる。
小学生レベルの引っかけからの逃れられないコンボ。
俺は銃を思うなり、至近から。
腕に衝撃はないけど、焼石が吹っ飛ぶ。俺は１メートル上から屋上に落ちる。
……左奥歯全滅したな。スカシバレッドでなく相生智太の血の味。動かないでと内臓が哀願する。
であろうが！
カウントを始めようか？
……私さあ、盾がないからさあ。
防弾チョッキをつけている
などと思っているうちに、俺のアドレナリンは急速に低下。腹部の不快感に屈服しそう。変身すべきか……。
こいつは欺瞞の
端から呼んだ
ｲﾗｲﾗ
いつものキレがないね。その女を傷つけたくないにしても、私も参戦するぞ
焼石様。今日のところは江礼木様に任せるべきだと思いますよ。彼女なら傷つけずに意識を喪失できますよ。……そろそろ援軍が来ますよ
……江礼木さあ、女の気絶させて。
これ以上の責めはさあ、見せたくない
ｵﾝﾅﾉ､ｷｾﾞﾂ?
このたてがみとつぶらな瞳とかわいい耳はブチハイエナ。俺は野生動物に詳しい。
ナマズラーガは当然のように二本足で立つ。尻尾だけ魚の尾びれ。俺だったらハイエナーガと名付けたな。
茜音が俺に寄りかかるように倒れる。
電撃を指図した女へと駆けだす。
こいつは自然体な構え。どんな攻撃が来るか分かるはずないとしても――。
こいつも組んでくれた。ようやく言える。
馬鹿め。やられたことをやり返す。
焼石は余裕で受けとめる。ゴリラみたいな力で奪おうとする。
だから俺は手を離す。体も離す。
奴の全身に高圧電流が駆け巡る。
焼石がうつ伏せに倒れる。焦げた匂いさえした。
なのに。
こいつは手にしたネーチャーの端末を握りつぶす。その手に緋色のマントが現れる。燃えるような赤髪と化す。
ナマズラーガは病室を確認して。おそらく外科病棟
俺を中空から不敵に見おろす。
ぼろぼろの体から脱したい。端末を破壊されて変身できない。
茜音はまだ倒れている。
あの時、貴様は私に何かした。私は貴様に好意を持ってしまった。
あらためて見ると、虫唾が走るほど。貴様は押部にも術をかけたと推測したが……。
ちょっと観察してみるか
そこからハウンドピンクが現れる。ツインテール。手には桜の枝。すでに精霊。
その後ろに母親のように侍るのは。
奴相手には戦い方が必要だ。お前は手をだすな
