白髪のショートヘア。黒いタキシード。白いシャツ、首もとに銀色のリボン。まずまずかわいい。胸は残念。
金髪のロングヘア。黒いタキシード、白いシャツ。首もとに金色のリボン。そこそこ美人。バストは平均強。
束の間の沈黙。
十二畳もありそうな円盤状の未確認飛行物体が、展望巨大一枚ガラスを割り大浴場に飛びこんできた。
ライトが消える。その上に立つ女性のシルエットへと四方からスポットライト。茶髪のミドルヘア。平均強の背丈で赤いタキシード。巨乳の下で腕を組む……。ラメ入りかよって気づくけど、こいつこそが。
「「「日本の平和を守り抜く、トリオザスーパースターだ!」」」
三人の声が重なる。
……左右が屈んでセンターの赤に手をひらひら伸ばす、決めポーズ。さすがに恥ずかしいからと、モスガールジャーでもしていないのに。
ガイアとアグルが抱き合って……全裸になるのかよ! でもモザイクのような光に包まれて、顔を含めて細部が見えず安堵する。
そこから瑠璃色の巨人が現れる。ツノの生えた鬼神の面。じつに2メートル50センチ。
関係ないです。
ウィローブルー、獅子が睨んでいますからね。アギトゴールドとレアシルバーは捕虜を連れて戻ってください
そやなと、金色リボンと銀色リボンが俺のもとへ飛んでくる。
睨みながら、傭兵さんたちを俺から奪いとる――。トリオスは男二人女一人のはず。レッドは女だと聞いた……。この二人も男か。
すべてをかき消す獅子の咆哮か。
精霊になったところで、お前に勝てるはずない。
ヌメリイヌ。私を守ってくれ
二人は破壊された窓から傭兵たちを抱えて飛んでいく。
レオフレイムがスカシバレッドをちらりと見て、しげしげと見る。
俺も見つめかえす。端正な顔立ち。黒目がちな瞳。それでいて強い眼差し……鳥肌が立つ眼差し。
スカシバレッド初めまして。私が灼熱の獅子、すなわちレオフレイム。そしてあなたの中身は男。
でも、あの低脳レッドよりもはるかにまともな眼差し
誰のことかは聞かない。そもそもまだ敵が残っているし、強大な敵が現れるかもしれない。本心ははやく桧のもとに帰りたい。でも戦わないといけない。
というか、戦っているのは仮面の二人だけじゃないか。
瑠璃色の巨人がヌメリイヌをつかむ。引きちぎろうとして手が滑る。
仮面ネーチャーラピスの眉間から瑠璃色のビームが発せられる。
ヌメリイヌが消滅する。
親衛隊の瞬殺。モスキャノン以上……。アグルとガイアが合体するとレベル200は嘘でなかった。
それよりも!
俺は叫び、よろよろと立ちあがる……。
エナジーが欲しい。ならば柚香の顔が浮かべろ。
好物のミルクレープを発見して、はにかみ笑う顔。それを守ると思えば、スカシバレッドに力はよみがえる。
「「その前に蒼柳を連れかえるか。傭兵たちと同じ目に合わせてやる」」
難しいですよ。
こいつは時空移動の達人。私がいても、いつでも逃げられる
そういうことだ。……関西のレッド、お前は四人で一番下だが悲観するな。レベルが高すぎるし、好みの問題だ。
私は百夜目鬼様の後継者を目指す者。
レベル180台と190台と200。それが相手でも柳のようにかわす
ウィローブルーが体に力を込める。巨体化して、二股の樹木の化け物と化す。幹には人の目と鼻と口。
仮面ネーチャーラピスが突進する。 樹木はパンチをさらりとかわす。
仮面ネーチャーの至近からのビーム。それすらもかわす。
レオフレイムの体から正義の炎が発せられる。スカシバレッドをしのぐ業火。
ウィローブルーの体が燃えだす。
毛嫌う姿になってまでも、逃げずに居残る。つまり時間稼ぎですか? ならば
マグマのごとき炎があふれだす。灼熱が大浴場を包む。
瑠璃色の巨人が窓から飛び降りる。
スカシバレッドも露天風呂出入り口へと必死に飛ぶ――。足に蔓が絡む。
炎の中を引きずられる。あちちちち!
甲高い悲鳴をあげてしまう。体中が燃えている。関西レッドめ……。
でも、どこからか水をかけられた。泥水?
ウィローブルーが悲鳴をあげて、俺はタイルに落とされる。巻き付いていた蔓が消える。
真スーパースター“燃える京娘”、今宵もお待たせ。ファイヤーダイヤソードで切り裂いてやる
つんつるてんの浴衣を着たレオフレイムが俺の前に立つ。その手には燃えるソード。
誰を待っているか知りませんが、あなたは獅子を怒らせました。この姿になると興奮しまくりますよ。興奮した私は暴走しまくりますよ
レオフレイムは赤い唐獅子の……関東人にはついていけないセンスの浴衣。ウィローブルーをにらんだ後に、俺を見おろす。
スカシバさんと呼びますね。私の特性は
獅子と
百合。清楚なフローラルな力で、力尽きたあなたを癒します。
……女に必要なのは外見でなく中身。なんて嘘。容姿こそ大事
しゃがんでスカシバレッドの頬をさする。……まじかよ。火傷が治癒されるのを感じる。
獅子の咆哮が言霊をかき消した。
レオフレイムはスカシバレッドを愛おしげにさする。全身を……。
……貞操シールドを確認しました。フーフー。やはりエナジーが弱まり、私相手に作動できない。フーフー。かわいそうに。フーフー
一撃で気づけた。
戦いの最中なのに。それを差し引いても、こいつはやばい奴だ。スカシバレッドは逃れようとするけど、足を絡められる。体術で抑えられる。
獅子の雄叫び。
レオフレイムはもはや治療を投げだして、スカシバレッドの体をまさぐりだす。
ふふ。あなたは中身が男。女の喜びを知りませんね。……私が教えてあげます。まずは赤百合の力でエナジーを回復しましょう
柳の化け物が呆気にとられて女二人を見ている。この女はかわいくて美人だけど、俺を見る目がヤバい。というかイカれている。唇が寄ってくる。 助けてくれ
かわいい声。私からエナジーを授かれば、愛姉妹の契約が完了します
戦場であろうと、こいつはスカシバレッドしか見ていな――。
指が上にずれてくるし……。スカシバレッドのアンダースコートに手を入れやがった!
貞操の危機。お、俺は雪月花を思う。その手に現れた端末を二度タップする。
時空から紅色の光が飛びだした。
一単衣の露出狂みたいなスタイルのかぐや姫が現れる。
紅月照宵あらため、紅色戦士スーパームーン。今夜がお披露目だ! テーマソングはもう少し待って!
はあ? 呼ばれたから来たのだし。
……まだ私とかぶる服だし、また馬鹿って言ったな。マジで赦さない
白い帷子、紅袴、そして赤い鉢巻き。凛とした化粧。強くて大きな瞳。女武芸者が現れる。ソードを両手で持ち、ウィローブルーへと向きなおす。
……ビジョンブラッドに輝く剣。これがルビーソード。スピネルソードより太く長い。
寂れていようが、温泉街にはお客さんがいるよね。ならば、このスタイル。
スカとお前が手こずったこいつを、私は三秒で倒す!
ウィローブルーが消える。
正義の赤い女三人だけになる。俺は火傷を治されたけど、コスチュームだけボロボロで横たわる。
『『スカシバレッド、聞こえるか。
強力な布理冥尊が現れた。援護に来い』』
抱えられて乗せられる。……何気に握られた胸が鉄の感触。貞操シールドが復活してきた。つまりようやくエナジーも復活、しかも独力で。