３６ ほぼファーストモス
文字数 3,056文字
……。
こんにちは、皆さんいますよ。……この部屋は今日までですね。大部屋になっても私の雇用を継続……
ﾄﾝﾄﾝ
ｶﾞｼｬ
最後に入室したのは、木畠茜音だった。
朝十時の清見涼の病室には、睦沢陸、夏目藍菜、壬生隼斗、伊良賀紗助が揃っていた。病院前では落窪一朗太が山犬の目で見張りをしている。
花鳥風樹でただ一人残る水越彩夏は広尾にいる。
芹澤陽南はいない。
智太さんもそこに向かう。合流しましょう”
あなたはまだ叛逆者のまま
俺はかまわないけどさ。
これって答えありきなんだろ？ みんなが仲間を倒すなんて言うはずないよな。逆に奴らを助ける
睦沢が微笑む。壬生も深くうなずく。
清見はベッドに寝たままで黙って聞いている。
僕は智太さんの力になるために、陽南ちゃんと合流したい
腕を組んだ木畠が同意するようにうなずく。
清見は窓の外を見ている。
また伊良賀が卑屈に笑う。
ヤマユレッドとスカシバレッドが結託するなんて、あり得るのか？
……。
もし事実ならば、あの団体こそが正義じゃないのか？
図体ばかりでかくなっても、脳みそはお子様だ
ｽﾀｯ
いいか？ どっちも悪だ。倒すべき悪だ。でも、我々は悪じゃない。
もし智太君、腐れ巫女、くそ月レッドが寝返ったならば、連中もぶっ倒される悪だ
もしかしたら、陸奥は赤い馬鹿どもを説得するために
あの女がそんなかよ
俺は馬鹿にされたのもコケにされたのも覚えている
あの子にとって、あの二人は大切だ。説得のためでなく守るためでなく、一緒にいたいだけだ
当事者はどちらも言わなかったが感づいた。あの二人は正直すぎる
多数決にする？ それとも責任者である私に一任する？
木畠が素気なく言う。
この二人はタイプが違うけど誰よりもやさしい。本人たちも自覚しているから、戦いに私情を持ちこまない。
『与那国司令官！ たぶん大失敗が待っているけど、あなたの作戦で行きましょう』って笑っただろうな
でもヤマユレッドは旧知だ。俺を布理冥尊へと真摯に誘ってくれた。俺が臆病なカスになってなかったら、彼女の後を追っていたと思う。
……みんなも彼女を信じてきたのだろ？ 殺されようが……、清見さんですら、なおも信じているのだろ。
だったら最後まで信じてやれよ
へへ
…………。
彼女は思い返す。レイヴンレッドに襲撃された日を。
全員の素性を明かさない代わりに、全員がやられた。究極の選択だったのだろう。あの女は、どれだけの心で渡り歩いていたのだろう。……激化する戦いから隼斗君たちを退場させようと望んだかもしれない。だがブルーは喰われた。所詮は二十歳前の女が器用に立ち回れるはずない。私ですら無理だったのに。
報復は必ずする。夏目碧菜は甘くない。お人好しの顔をしているだけだ。とことん根に持つ。ましてや仲間を傷つけられたのならば。
