03 雪月花解散
文字数 3,702文字
柚香が会釈する。
柚香は彼女の隣のカウンター席に座る。
俺もそっちに行きたいけど、ガイアさんの隣に座る。
単刀直入に聞いてみたら、スナック内の空気が変わった。
芹澤がカウンターで目を輝かせている。彼女は親から半分勘当されて、この店でバイトをしている。行田から通うのは片道一時間以上らしい。
春日さんのおでこに青筋が浮かんだ。
ドアの前で陸さんに押しとめられる。女性ホルモンにも限界があるらしく、タンポポのワンピースを着ていても、この人は女? とは思わない。伸ばした髪はきれいだけど、おなじ背丈の蘭さんと比較してごついというか、夜道で会いたくない。
だとしてもお店のママじきじきに押しとめられたから、もう少しだけ居残ることにした。
ガイアさんの隣に戻る。コーラをストローですする。
気まずい沈黙。知ったことじゃない。
でっかい花束を渡す。傷ひとつ残らなかっただけあって元気そうだ。
まず蘭さんが経緯を説明した。お腹に赤ちゃんができたので正義の味方を続けられなくなったとのこと。当然だ。
陸さんも清見さんも知っているようだった。芹澤はきょとんとしている。
春日である老人が立ちあがる。
君たちの活躍により、布理冥尊は深手を負った。親衛隊も半数は倒しただろう。さらには五人衆さえも二名。
その反面、奴らの最精鋭がおもてに現れだした。そして九州管轄が壊滅した。お互いに殴り合いの様相になってきた。我々はさらに気を引き締めていかないとならない。
五人衆がいまだ三人。それに加え親衛隊隊長。執務室長。更にはボディガード三人。なにより百夜目鬼大司祭長……。
まだまだ我々よりも強大かもしれない。今までの戦闘スタイルでは本宮にたどり着けない。なのに関東管轄の切り札、いや組織全体の切り札である雪月花がこんなことになってしまった。
前例がないが、チームを再編成することを承知してもらいたい
単独で本部の用心棒をさせられる夢月はいない。誰も問い伏せられないから。
陽南ちゃん、北酒場を入れて。マイクもよろしく。……冗談だから目を輝かせないで。
ええと、私たちは本部の意向に沿い、本部の好きそうな根回しのため、一部のメンバーに打診をしてきました。
深川さんの話によると、腐れ失礼陸奥さんはその気がありありのくせに、わざとらしく声を荒げたそうです。
我がチームのエースに到っては、どうしてもモスガールジャーを続けたいと、いつも以上に人の話を聞かなくなりました。
しかし、そんなことは知ったことじゃない。我々は正義のためだけに尽くす。おのれの意思など不要だ
私と深川さんで話し合いました。
あの若い二人は甘い。私とひとつしか違わないのに甘々だ。そんな二人を説得して一つのチームにしても、良い結果が生まれるわけがない。戦いもせずに乳繰り合うか、『私たちは無理やり組ませられたのだから失敗だってあります』と、言い訳するのが目に見える。
なので、この二人には二代目雪月花など組ませません。
今後相生君は仮面ネーチャーとともに戦う。
代わりに陸奥さんがモスガールジャーに入る。
これでAランクチームが二つ確保できる。竹生さんはスーパー特務隊員『紅X』などと格好いい肩書を与えれば満足してくれるでしょう。
以上が落窪さんから授かったアドバイスも加味した案です。ご賛同者は拍手をお願いします
陸さんや隼斗は口にだせないだろうから、私がはっきりと言っておく。
陸奥柚香。お前は、司令官から上品ではない呼ばれ方をされているのは知っているか? わたしは彼女を否定しない。仮面ネーチャーと同じ理由でだ。
……Fランクまで落ちた私たちへの態度は忘れない。忘れたくても忘れられない!
ともに正義を守る一員として、私たちはお前を受けいれる。組織のために招き入れる。お前のフォローの魔法があれば、今までのスカシバレッドに頼ったものとは違う、みなが力を合わせた戦いになるだろう。
だとしても、お前はスパイラルレインボーのセンターにはさせない。おそらく螺旋の光は発射されない。お前はグリーンの反対側で一番端にいろ。
センターはスパローピンクだ!
だとしても、かわいいは正義。俺だけは彼女の味方だ。