08 近衛エリート小隊VS俺
文字数 2,685文字
暗闇のなか、スカシバレッドは冷静だ。ここは五階。シルクがいるのは四階から一階にあるこの部屋の真下。玄関へ向かわずに、ソードを遮光カーテンへとクロスさせる。
窓が割れて風雨が飛びこむ。土砂降りのピーク。部屋は薄闇になるだけ。外に飛びでたスカシバレッドを雷が照らす。彼女は瞬く間にずぶ濡れになりながら、ひとつ四階の窓を蹴り破る。
屋内を照らす。近衛エリート三体が目を背けている。ゴーグルも無意味だったな。
スカシバレッドは斬撃を二つ飛ばす。一体を直接斬りつける。
瞬時に殲滅。でもシルクイエローはいない。
次の階!
三階。スカシバレッドは窓を蹴破ろうとして――、野獣の勘。
ソードをクロスさせる。
それでも爆発に巻きこまれる。道の反対側まで飛ばされる。
これは圧縮された高位エナジー爆弾。
銃弾よりはるかにダメージを浴びたスカシバレッドに、さらなる怒りが噴きあがる。
屋内へと斬撃を浴びせながら屋内に戻る。
誰もいない。――次は二階。もう外から回りこめられない。
スカシバレッドは廊下へとでる。同時に転がりながら
斬撃!
敵はいなかった。
非常階段を飛んでショートカットする。扉に斬撃。案の定爆発。階段が崩れ落ちる。矢を射ちながら屋内へと突入。時間をかけ過ぎだ。
引きずられた血の跡がエレベーターへと続いていた。
気配!
非常ドアから何か投げ込まれた。
どっかーーーん!!!
目の前が白くなった。ジャンボジェットが墜落したような轟音。
肉体的ダメージはないけど、なにも見えない。聞こえない。正規の転生じゃないからゴーグルが現れない。夢月め……。
痛てて、痛い、痛。
自動小銃の銃弾を四方から浴びまくっているかも。さすがに膝ついて頭を抱えてしまう。
目が回復しないとどうにもならない――。
足もとに何かあるよな?
爆発!
体が天井にぶち当たり、バウンドして床に叩きつけられる。
スカシバレッドはすぐに立ちあがる。
スカシバフラッシュ!
アンド、四方に斬撃と矢をぶち込みまくる。
視力が戻りだす。壁に背をつけて見回す。戦闘員が二体消えていった。この子の体を傷だらけにしやがって……何よりもシルクイエロー。
エレベーターが上がってきた。今いる三階を通り越して進む。
俺はまた非常口に進む。豪雨がこの子の血を洗い流す。出血は止まっている。さすが俺。スカシバレッド感謝しろよ。
二階フロアをスルーして一階へと。ドアに斬撃を食らわして突入する。とフェイントして三秒後に再突入。誰もいないではないか。エントランスは静かなままだし。エスカレーターに引きずられた血の跡はない。地下階もないし。
ならばあれはダミーか? シルクはどこだ。
エレベーターが降りてくる。俺はスピネルソードを両手にかまえる。至近の雷が聞こえた。耳も回復した。ドアが開く。
北風が吹いた。
びしょ濡れの白装束と化す。スカシバレッドへと微笑む。
黒色の光に包まれて、黒装束をまとった巫女が再び現れる。
露出部分は多いが、夢月のお祭りバージョンほどではない。向こうに持っていかれたな。しかも胸は柚香に戻っている。いやむしろ、それがいい。
などとじろじろ見ている場合ではないだろ!
その両手に神楽鈴と祓いの御幣が現れる。
なるほど。深雪はかわいいだけでなく最強のサポーターかも。
女エリートだけがドアへと銃を構えたまま固まっている。そいつの自動小銃を取り上げてポケットをあさってから、後ろ手に手錠をかける。
深雪が部屋の時間を動かす。
押収した手りゅう弾を手から消して、彼女は去っていく。……すぐにシルクも回復してもらえるし、深雪に任せた方がいいかも。でも敵を捕虜にするのは煩わしい。
190センチほどもある均整のとれた体の女近衛エリートが、顔のマスクを濡らしていた。