24 丘の上のモス
文字数 2,870文字
モスウォッチへと怒鳴りながら、スピネルソードをマンティスグリーンに投げる。どちらも鎌に落とされ消える。
五人衆……。こいつは強すぎるから。
三人はカマキリをにらみながら何げに並ぶ。
とピンクが俺の左手を握る。
メーポポへと向きを変える。
三人の声が重なる。
残酷な赤黄桃の螺旋。
スカシバレッドの膝から力が抜ける。精神エナジーの喪失。関係ない。
すぐにマンティスグリーンに向きを変える。
イエローはすでに槍を構えて女の子へと突進していた。
ダダダダダダと掃射音。
ヅドーン
グレネード弾が彼女に直撃。
よろめいても、倒れない。飛んできた手りゅう弾を槍で打ちかえす。
林から近衛エリートの悲鳴が聞こえ、直後に爆発する。
俺の全身から放たれる、燃える炎のような正義の光。憩いの公園である秩父の小さな丘のはずれを包む、林にひそむ近衛エリートどもを瞬殺する光。
先日、某魔法少女の秘密特訓の島を無断拝借して、秘密特訓をして良かった。サイキック以来のスパイラルレインボーも念入りに鍛えた(もちろん海に向けて発射した。驚いた海鳥に糞を落とされたけど)。
レベルが上がりエリーナの複雑な計算が必要になったが、宇宙帰りのスパイラルレインボーならレベル172未満は二発で倒せるらしくて、その通りだった。
シルクが女の子を抱える。反撃は受けない。
命は大事だから、
あのよく分からないけど分かったふりをしてきた単体リスクの計算によると、モスガールジャーが四人そろえば185に拮抗するのに……。
まだ三人か。こいつは190超えか。つまりそもそも足りない。
切願しながら再度光らす。特攻してきた近衛エリートが溶ける。
これもけっこう消費する。ライフ値は満タンでもコンディションが減っていく。つまり精神エナジーが減っていく。エナジーに頼る俺こそキツい。
手を握りあう俺とピンクに背を向けて、イエローへと鎌を向ける。
馬鹿め。
三人の声が重なる。
赤青桃の巨大な螺旋がマンティスグリーンの背中を飲みこむ。
ハナカマキリが羽根をひろげる。螺旋の光を空へと逃れる。
まずい。あの必殺技は五発が限界。それでさえ、出しきれば地面に大の字で転がる。あと一発だと190越えは絶対に倒せない。
最低でもあと三発。そもそも計算が合わないのは仕方ない。
スカシバレッドはよろめきに耐えながら、二人に言う。
なのに
……知る必要ないよな。
このゴーグル越しだと、すべてが透明。樹木や虫は影で存在する。
カマキリのシルエットが俺たちへと向きを変える。両方の鎌を向けて飛んでくる。
馬鹿め。気づいてないと思っていやがる。……最後の一発。決めないと。あとはヘトヘトで。
柚香、夢月……。
俺はエナジーが0になっても戦える。守る人がいれば沸きあがる。
だから、先の事は考えず。
ピンクのシルエットがカマキリへと跳躍する。
その下には、動かない人の影。虫や樹木と同じく精神エナジーの反応はない。
カマキリの影は動じない。そのエナジーが嘲笑う。青と桃。二つの影へと鎌をかかげる。
俺の手に煌々と赤く輝くソードの影が現れる。
残り少ないエナジー全てをそれへと注ぐ。燃え上がる。
俺はカマキリの体を残忍に思いだす。狙うべき部位は……スカシバレッドが食らいつくならば、あの柔らかそうな腹。
暗緑の影へとソードを交差させる。
まだまだ終焉じゃないけど叫ぶ。
陰惨なまでに赤黒いXが飛ぶ。