１９ 生け贄のスカシバレッド
文字数 3,343文字
下も見えんでふらふら飛んでいろ。
こちらから状況報告せんからな。
いまにカラスが戻ってくるからな！
つつかれて落ちても助けには行きません！
ほなさいなら
そんなのに、ほむちゃんが化け物なったの教えるわけにいきませんわっくしょん
アギトゴールドがむき出しの両腕をさすりながら言う。
トリオスの二人はモスを追い払いたがっている。でも司令部はなおも居残る。そして司令部もトリオスも、俺が龍になったのを見ていない。
まあ原理主義など苦しもうが知ったこと――スカシバさんは違うと思ってますが、すみませんでした
……九州討伐のときに、ほむちゃんはマントをひとつ自分用にしました。関東はみんな持っていると嘘つきましてね。うちらも彼女がどんな姿になるか見たくて、認めてしまいました
で、マントで変身したのですかと最初に聞きましたでしょ。時間もないので、はよ答えてください
新しいマントで変身した竹生と一緒に解除すればよろしいですよ
へとへとのスカシバさんに申し訳ないですが、おとりになってもらいますわ
金に糸目を付けずにいきましょう
バコン！
アギトゴールドの頭突き。そんなものも避けられず、スカシバレッドは地面に落ちていく。数百メートルも。
ライオンの肉球がキャッチしてくれた。
こいつは獣臭くない。なおもフローラルな香りを漂わせている。
スカシバレッドは３メートルほどの獣人にお姫様抱っこされる。赤いたてがみ。黒目がちな瞳。かわいくはない。ただただ怖い。
ｼﾞｭﾙｯ
即答される。
だとしても手にソードを現す。
その前に邪魔者を――
仲間に対してなんてことを……。よく分かった。やはりあのマントは感情を助長させる。あれは悪だ。あれで戦ってはいけない。当たり前のことだった。
俺は……
…ﾄｵ!
蔵王山の山中でスカシバレッドが応答する。穂村をおんぶする。
マントを使ってはいけない。トリオスと共闘してはいけない。いまさら二つの教訓を得た。
