０５ 女二人男一人の北国温泉紀行
文字数 2,824文字
中退の真面目そうな高二女子と不登校のおたっぽい中二女子。どちらも眼鏡。それと二十歳の地味な男。つばさの座椅子をボックスにまわした三人組を第三者はどう見るだろう。芹澤陽南は垂れ目だけどかわいい。洞谷湖佳もかわいくなくはない。
春木千由奈は丸くなってきたけど、学校で一番ぐらいにかわいい。でも、ここにいない。
湖佳は太らない体質みたいだから同様の生活をするな。食事を減らすでなく運動をすべきだ”
千由奈は赤くなり青くなりピンクのマントが手に現れたりして、涙目で端末も手に現して消えた。
戦友である前に十代半ばの女の子であることを忘れていた。翌日からの東北遠征に顔をださないほど衝撃を受けるとは思いもしなかった。
……お兄ちゃんは元気そうでよかった。明日から気をつけてね”
ﾋｮｲ
おお、おそらくあなたは、私が並べた不平不満を何ひとつ聞いていなかったでしょう
ちなみに変身機能は竹生殿に頼んだら、喜んで破壊してくれました。なので私たちは、ああ、なおもマント経由で精霊のみです
特性を見ればどちらが本物か分かりそうなものですが
ﾒｶﾞﾈｦ､ｸｲ
褒めるようで気にいらないですが、竹生殿は
ﾒｶﾞﾈｦ､ｸｲ
ﾆﾔﾘ
厳密には従妹です
俺は言葉を濁らせる。
春木千由奈と洞谷湖佳。藍菜が抱える有能な興信所であれば、本名が分かればたやすく生い立ちを調べられた。機密扱いだったが、広尾で七時間粘って教えてもらえた。
洞谷家はネグレクト。母親が再婚した際に、湖佳の精神エナジーに気づいた護教隊に夜の町でスカウトされて布理冥尊に転がりこんだ。娘が寮生活になり手付金ももらえて、親は大喜びでパチンコで溶かしたそうだ。残された弟は義理の父から虐待を受けた。そのクズは七月に交通事故で大怪我をした。ひき逃げ犯人は見つからない。
あの二人には帰る場所がないのかもしれない。とくに湖佳は。
できるのならば正義の味方を続けたいです
……。
