24 後腐れそうな後始末
文字数 2,560文字
ガイアさんは岩飛を連行して表稼業に戻った。適当な軽犯罪を押しつけて、留置場にいれるそうだ。さすが国家権力。かつらと眼鏡も用意してあった。
本宮の場所を押部諭湖のために知る必要があるけど、俺に尋問は……無理だろうな。
清見さんは一般の病室に移された。ICUにしろと詰め寄ったら、アグルさんが指示したらしい。目立てないかららしい。
清見さんは苦悶の表情で意識を戻さない。
医者が来た。
詳細はご家族に伝えるが命に別状はなさそうです。ちゃんとした検査は受けるべきでしょうねだと。
蘭さんからのメッセージが溜まっていた。たしかにこれでは藍菜クラスにいい加減な人間に見られる。しかし夢月を離れさせるなよ。彼女は高校中退でもいいだろ……。
俺の思考は自己都合オンリーに化している。ざけんなよ俺。
ちょっと格好をつけてしまった。病室を出る。
雪以外のレベルが大幅に低下するモスガールジャーは、Aランクを維持できないだろう。生き延びている化け物同士の戦いに参加できるはずない。それでも彼らは正義を貫くだろう。おのれが信じる本当の正義を。
病院に隣接したカフェでアグルさんと向かいあう。
本部から公式メッセージが届いた。
春日の件は事故らしい。なので月にお咎めなし。すべての責任は、雪を匿った赤い蛾にある。赤い蛾にはペナルティを処す。仮面ネーチャーの報酬は現金だから、懲罰も現金。
三千万円だそうだ
静かな店内がもどかしい。怒鳴り飛ばしたい。
アグルさんが笑う。
雪の件は、花の耳に入る前に処理したかったみたいだ。なので君の母屋を襲うなどと暴挙にでた。でも花も僕たちも知った。
おそらく彼女の叛逆者認定は解かれる。何かしらのペナルティは与えられるだろうけどな
でも、あの団体は親族に手をださないじゃないかな。月を怒らせるメリットがない。
あれの性格は向こうさんも知っている。母親などを人質とするのさえリスクはある
ヤマユレッドであったレイヴンレッド。
正義の味方を名乗ろうが、周りに聖人君子なんて一人もいない。
キツイ小説を書くいい加減な藍菜、ふんぞり返ってほくそ笑む蘭さん。『いいね』でなんでも済ます隼斗。かわいいし真面目なのに強きに弱く弱きに強い柚香、その失態を喜ぶ茜音。この状況で言いたくないけど『私は忙しい』で押しつける清見さん。女装した陸さんの容姿……。
一般人のがまともがいるかもしれない。でも共通するのは、悪を倒し正義を守る心。夢月からも、その心を感じる。悪を微塵も赦せないほどの圧倒的な正義を。
青い蛾はいずれ回復するから気を病むな。それより例の件を深川に説明することを忘れないように。
……君の戦いはスピーディで素晴らしかった。でも、龍って感じではなかったな。レベルは違うにしろ本当の女たちに圧倒されていた。
モスの件も心配しなくていい。夏目はやられたままの女じゃない。あの女は病室で悪だくみをする。正義の悪だくみをな
どういう評価か分からないけど、ならば早めに理不尽な事故に遭ってもらうべきなのか。
アグルさんがレシートを持ち去っていく。
俺はトイレに入る。