14 晩秋の空

文字数 3,013文字

『モスからの参加は白滝深雪とスカシバレッドだけだが、モスプレイが全面的に援護する。作戦開始は七分後の八時十五分』
……。
 アメシロのオウム声がサント号上に流れる。この円盤はモスウォッチなしでも通信できる。

『お釜がもう一つできるほどにモスキャノンをぶっぱなしたのちに、深雪君が結界を張り超音波を放つ』


……。
♪♪

『トリオスの金銀は深雪君を援護してくれ。直後に赤三体が突入。主戦はスーパームーン。レオフレイムとスカシバレッドがサポートだ。

魔女が現れたならば、奴と何度か戦っているトリオスが前線で指揮しろ。アギトゴールド君頼んだぞ』

シンプルな作戦ですな。

あぶく銭つかまされんようせんとあきまへんで

……。

 クワガタ女(こいつ)がトリオスの実質リーダーだったのか。さすがは尼崎出身。どんな町か知らないけど。

 俺は心に雪月花を思う。右手に端末が現れる。柚香との通信は切れたまま。画面を二回タップする。

 
さむ! 空だし!
寒いからこっち!
変身!
 制服姿の夢月が現れると同時にかぐや姫になる。晩秋の山形上空ではスクール水着を選ばなかった。
……レオフレイムがいる。あいかわらずお笑いみたいな格好
まだスーパームーンと呼べばいいのですかね。知性を感じられない名前と顔
レオちゃん、今日こそは仲よくしましょ。そろったところでほんまものになりますか
そうね
♪……ハクション
よけいに寒いわ!
 三人が浴衣姿に変身して、くしゃみする。

タキビ、シヨ

フレイムオブジェネラル
レオフレイム、遊びは終わり。消して

ズズ

 アギトゴールドが強い口調で言い放つ。鼻をすする。
アツギ ダカラ ヘイキ
12マイ キテイルカラ ヘイキ
『五分前。巫女をそちらに転送する。コードを教えて』
 
 
 
 
 
 サント号の上に乗った五人がフリーズした。トリオスの三人が二人を見る。紅月は俺を見る。
関東の人はえげつないな

ボソリ

オウムさん一分前で充分ですわ。


スカシバはんはレオフレイムと一緒に行動してな。かぐや姫は自力で飛んでください

……了解
うん
飛べなくて迷惑かけます。スカシバさん、よろしく
 レベルが一番低いスカシバレッドはレオフレイムの運搬役かよ。
『60秒前』
 アメシロの声が緊張しだした。
ヒュ~
 北風が吹いた。
……。
……。
よろしく
……。
 スカシバレッドは顔を合わせない。よろしくとレアシルバーが会釈する。深雪は無言のままだ。
…チラッ

…チラッ

 かぐや姫はちらちら見ている。
かわいい……

 レオフレイムの嘆息。

 思わず目を向けてしまう。

……。
……。
 深雪は黒髪に戻して短くしていた。首にかかるおかっぱ頭。子猫の瞳。罪悪感を上回る後悔……。
『45秒前。ターゲットに二百メートル手前まで接近して』
狩りの始まりですね
 スカシバレッドは我に返る。レオフレイムが隣に来る。
せいや! ミカヅキ!……チラッ
 お祭り娘が現れた。ハンターの目で林に隠れたアジトを見つめる。なのに深雪をちらりと見る。瞳に逡巡が漂う。
『30秒前、29,28』
『早まらぬようにな。モスキャノンに巻き込まれるぞ』
……。
 背後で黒い光。スカシバレッドはどうしても見てしまう。
……。
 ショートヘアの黒神子――
『19,18、17、ギャー!』
!!!
『き、巨大化した虎に襲撃された。援護に来て』
 さすがレイヴンレッド。
『いや。本機は宇宙まで退避する。諸君らはすぐに作戦を開始せよ』
……。
 与那国司令官のどたんばの捨て鉢。
お姫さん、ばれているならば最大限の攻撃や
魔女はなおもあんたを恐れていましたぜ。滅びの光を
だったら至近からだよ
 深雪の声、柚香の声だ……。
遠くからだと巻き添えが拡大する
……うん!
 お祭り娘が嬉しそうに飛びだす。
 ミカヅキに乗り両手で空を抱きかかえる。それを林へと向けて、
!!!
!?
 白い光に包まれる。
……。

 いなくなった。……また一撃で消えてしまった。でも。

 死んではいないと、野生の感が断言した。

魔女だ! どこだ?
 
左下からフレア、避けろ!
ギュンギュンギュン…

 サント号が上空へと退避する。

 逃げる場合じゃない。

俺は戦う!
 スカシバレッドはサント号から飛び降りる。
私も行きます!
 レオフレイムがしがみついた。飛べない彼女を巻き添えにできないだろ。
私は高度2000メートルから落下しても平気です。跳躍も200メートルできます

 ならば巻き添えだ。

 夢月はどこだ? 雪月花端末は静かなまま。俺は彼女を守ると誓った。なにもできなかった。死んでいるはずない。もう死なせない!

……。
……。
 
 
 魔女が宙に浮かんでいた。俺へと手を向ける。白い光。レオフレイムが背中にいようと余裕で避ける。
 
百夜目鬼め!
 白い魔女がまた手のひらを向ける。背中のレオフレイムが足をスカシバレッドの腰に絡ませる。両手を上に伸ばして下ろす。
この体勢で使えるのは、フレイムオブエンペラー!
ボワッ
 髪に熱を感じた。白いフレアを炎が飲みこむ。
ちっ
 白い光は突き抜ける。スカシバレッドは軽々と避ける。
地上戦に持ち込もう!
 レオフレイムの声は風にも負けない。
……。

 スカシバレッドは地上を目指す。……俺の体のどこかで端末が振動した。スクランブルだ。やはり夢月は生きている。なのに俺のはスクランブルに対応できない仕様。

 心に雪月花を思う。

どこにいる!
 端末に怒鳴る。返事はない。
 
 白い光が飛んでくる。
フレイムオブトルネイド!
ゴオオ……
 レオフレイムの叫びとともに、スカシバイクが炎の渦に包まれる。
メラメラ
……。
 炎が守ってくれるけど、なにも見えない。しかもかなり熱い。
空中戦はサント号で戦い慣れているけど、スカシバさんの背中を抱くのは……汗ばんでますね。いい匂い
!!!
 スカシバレッドの貞操シールドが発動した。なんて奴だ。
そろそろ地面です。解除します
 
クッ
 炎の渦が消える。同時に白い光。命を賭した模擬戦の成果。これくらいぎり避ける。
『スカシバレッド聞こえる?』
!!!!!
『私は雪月花の端末をオンにした。スーパームーンのスクランブルに対応できた。

彼女はライフがほとんどないまま閉じこめられている。回復するそばから消えていく。私がフォローしても同じ。……魔女の呪いだ』

どこにいる?
『夢月はアジトに落とされた。露天風呂がある庭。敵は掃討済。結界を三重に張ってあるから君は来なくていい』
 来なくていい?
そちらに向かう
 行くに決まっている。
『……彼女の傷はひどい。見るべきではない』
……。
 通信が切れる。……だとしても。



 レオフレイムがようやく体を離す。

私とサント号が囮になります。

ここにいる六人が力を合わせれば必ず魔女を倒せる。まずはあの子を復活させて

……。
 魔女は俺を怒らせた。六人も必要ない。それでも。
お願いします
 スカシバレッドはすべての仲間に感謝する。再び空へと浮かぶ。
 アメシロから連絡はない。モスプレイが消滅すれば、俺は昨夜の宿に、深雪は東京に戻される。でも、とにかく夢月。上空からアジトが見えた――。
ビュン!
 金色の矢! なによりも早く鋭い。スカシバレッドはそれでも避ける。夢月との模擬戦の成果だ。そうに決まっている。
やっぱりおめも一晩で回復しだな
ビュン
 天馬の特性をもつセイントアローが待ちかまえていた。剣闘士のくせに手には洋弓。矢を放ってくる。
……。
 そんなもの、スカシバレッドは首だけを横に曲げて避ける。
邪魔だ
 姫を守るソードを両手に現す。
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登場人物紹介

相生智太

=スカシバレッド

スカシバレッド

=相生智太

清見涼

=エリーナブルー

エリーナブルー

=清見涼

睦沢陸

=シルクイエロー

シルクイエロー

=睦沢陸

壬生隼斗

=スパローピンク

スパローピンク

=壬生隼斗

夏目藍菜

=与那国三志郎

与那国三志郎

=夏目藍菜

木畠茜音

=アメシロ

アメシロ

=木畠茜音

陸奥柚香

=白滝深雪

白滝深雪

=陸奥柚香

竹生夢月

=紅月照宵

紅月照宵

=竹生夢月

深川蘭

=紫苑大夫

紫苑大夫

=深川蘭

相生桧

=智太の妹(従妹)

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