なんでお前が戦地にいる? 蘭さんが添い寝してくれたから完全復活だ。
……その前は智太君が一緒にいてくれたんだよね
柚香が手にした靴を消し、赤らみながら俺を見る。彼女に抱きついて寝ていたのは夢月だけど……、
柚香の目に俺への嫌悪が浮かんだ。
なんてことだ! バクサーめ。
なんてそぶりは見せずに。
一緒に変身しよう。敵は門番が二体、五人衆が二体、親衛隊が二体
顔を背けながら言う。布理冥尊への怒りが理不尽なまでにこみ上げてくる。
体を180度回転させられる。裸で抱き合う二人を茜音に見られたくないだけと思いたいけど、背中合わせの二人。
愕然とする間もなく、至近でコンドルと目が合った。でかい爪。
俺は空へとさらわれる。
落ちたところをナマズラーガに咥えられ、放り投げられるのを、俺は爪を食い込まされて浮かびながら見る。
叫ぶしかできない。
ワシモーサ。その男は隊長のものと決まっている。
私に花吹雪がかかっている気がする。だとしても、敵に加えて原理主義二人に術をかけるのは無理でしょうね。中学生の女の子には
ガキのままでは原理も真理も見えるはずない。はやく執務室長に女にしてもらえ
ワシモーサ。この戦いが終われば、お前の好きな処刑ができるぞ。
裏切り者を見つけた
お前に精霊の盾はないな。ここから落としても毒を注入しても死ぬな。
このまま本宮に持ち帰る。その女はラーガに譲る。裏切り者の処刑もな
状況で気づいてくれ。そいつを連れ去れば、あの女は滅びの光をだす
レイヴンレッドは、かぐや姫に戻った夢月を見ていた。
すぐ下は民間人だらけだからな。俺はいいから大技はだすな。
かぐや姫はびくりとして、空を抱えそうな手をほどく。
桜色の毛並みの中から、タヌキが不安げに俺を見あげている。
つまりそれは誰もが変身できる。
茜音が鼻血をぬぐい立ちあがる。……モスの実質ラスボス、レインホワイト。
タヌキはまだ消えない。俺だけを見ている。戦いのさなかなのに、諭湖への申し訳ない心が湧きあがる。
だとしても。
間一髪。
柚香と茜音が正面から抱き合って生まれたままの姿になるのを、俺は空から見おろす。
二人は光に包まれて。
アメシロちゃん、かわいいけど危ないよ。こっちにおいで
必死の形相のオウムがかぐや姫へと飛んでいく。抱えられる。
紅色の光に白色が重なり、アメシロが人の姿に変わっていく。
かわいこ戦隊最後の砦、レインホワイトがお相手しよう!
ハウンドめ……。
智太君を連れ去らせない! 清め給へ、囲み給へ
深雪は黒神子になれない。三回唱えて三段重ねでも梅の結界。
俺は闇に閉ざされる。
何も見えない。何も聞こえない……。
………………。
「おーい」
「忘れていた。初夜!」
百年ぶりほどに感じる紅月の声。
闇の中に光の筋が現れて、広がるように世界が顔をだす。
落下する俺をお祭り娘がキャッチする。さすが精神エナジーの具現。おとなの男をお姫様抱っこ。
……夜になっていた。でも高層ビルたちは明るい。この屋上だけ? ハウンドピンクの結界か。
朔で隠せるの、柚香の顔見たら思いだした。
それより智太君に見せたかった。あの二人の息はぴったり! コンドルがあっという間にやられたよ
たしかにワシモーサはもういない。でも、規格外を名乗っていたよな? 弱すぎないか?
アメシロちゃんと十分以上連絡取れなかったから、夏目がジジイに転生した。
コンドルが空でエナジー照射されて、深雪とアメシロちゃんがとどめをさしたんだよ。
私も二十三夜と二十六夜を二十九回ぐらい援護したけど
さすが夏目藍菜。つまり、彼女が捕らえられる心配はなくなった。
一秒にライフが1回復する紅月はすでに元気満々だ。俺は彼女の腕から降ろしてもらう。
深雪とレインホワイトがナマズラーガと睨みあっている。……レイヴンレッドとウサミンミンもいない。アフガンハウンドとタヌキはいる。
虎カラスはアメシロちゃんが変身するなり逃げた。私が甲州街道沿いに八王子まで追いかけたけど、やっぱりウサミンミンは私でも無理
仇であるレイヴンレッドが去ったことに安堵を感じてしまった。情けない。
……私は一度竹生夢月に戻ります。智太君は一緒に変身してください
相生智太と裸で抱き合うのを、二人は奪いあっている……。ハウンドピンクがまだいた。解除したら変身しなおせない。
どちらも今のままでいろ。ハウンドを攻撃しないのか?
滅茶苦茶強い結界を張っているから、大技じゃないと無理。事前に別の奴がかけたのかも。
……智太君は私が守るから心配しないでね。
むぎゅ!
精神エナジーの具現にしがみつかれる。すごいパワーだ。がぶり寄りだ。海老反ってしまう。
ムカムカ
……色情魔である竹生夢月。あなたの素性は調べ終わりました。あっちの世界でもお姫様。とてつもない不動産の未来の相続人
穴熊パックが惑わせようとするけど、そうだったのか。
だが頭脳は壊滅的。正義を名乗る者が、なんとあそこに在籍するとは……。ああ、あの高校こそ悪の巣窟
パックめ……。お前が透明になっても、私は見つけられるのを忘れたのか?
奥歯を噛みしめたあとに、お祭り娘がかぐや姫に戻る。一になるのを忘れて十二単衣だから押されてしまう。
ずっとあの姿でいて頭に来るとあいつらを……なんでもない
レイヴンめ、飛べない私を置いていきやがって。
ホワ、ホワ、ホワッ
無尽蔵じゃないの知っているだろ。もっと強い技をだせ!
チッ、キヨメタマヘ、ツヨメタマヘ
怒鳴り返しながらも、深雪はレインホワイトに御幣を祓う。
光り輝く白い雨が矢となり、ナマズラーガに次々突き刺さ、らない。
アフガンハウンドは傍観している。原理主義を傍観している。
お姫様も戦わなくてよいのですか? それしか取り柄がないくせに。
……あなたは姫じゃない。戦場にしか居場所がない軍神
その男から離れるべきです。……お前に怯えているだろ、離れろ!
中坊が調子に乗りやがって……。弱い者いじめをしないと思っているのか?
俺が夢月を怖がるはずない。あいつは無視しろ。
与謝倉。俺が変身したら勝ち目がないぞ。タヌキを連れて立ち去れ
……パックはアナグマだろ。
勝つ必要などない。猟犬は追うだけ。狩るのはハンターに任せる
怒鳴り返しながらも、純白の女戦士は巫女の前に立つ。太もももへそも背中も丸出し。もともとがスタイルいいから様になる。エロいけど。
ナマズラーガの電気を帯びたドロップキックに、二人そろって吹っ飛ばされる。
いつまでも舐めやがって……。ハウンド、私はここで真理と一体になる
ハウンドピンクたちが言うけど。
ハイエナの化け物が体に力を込める。
ナマズラーガが見上げるほどに巨大化する。ハイエナの背中にトゲが生える。尻尾が巨大なナマズとなり口を開ける。ハイエナの顔は骸骨の如くなる……。