３３ 波打ち際の陽だまり
文字数 4,392文字
だからさあ、話し合おうよ
ﾖｲｼｮ
レイヴンレッドより健康的。
月明かりをだせなかった夢月がスカシバレッドの目線に気づくことなく、賢明にも勝負を放棄した。
スカシバレッドはおのれの胸もとに目を向ける。さすが規格外だけあって出血はおさまっている。でもライフ値は……残りどれくらいだろう。
ついでスカシバレッドは相生智太のお姫様へ顔を向ける。
でも私たちは星空義侠団と違います。心が揺れることはありません
それでさあ時間はないよ。トリオスがじきに現れる
あなたは、なぜモスガールジャーを裏切ったの？
……モスを裏切ってないよ。私が寝返ったのは夏目藍菜。本部は悪かなと感じていた。そう観察していた
……いらっしゃいませじゃなかったよ。十発以上殴られて服も脱がされそうになった。でもさあ、あの方がやってきた。すべて赦してくれた。
『私こそ滅ぶべき悪です』そう言った。
『その後に楽園が来ます。その時は、あなたも導きの一人です』そう言ってくれた。
じゃあ仲間を集めよう。でもさあ、茜音っちはあの女を選ぶよな。涼さん、紗助君、隼斗君、陸さんもだな。
蘭さんは裏切らない。夢月は嫌い。柚香はもっと嫌い
現れたスジバッカレットウは超絶大嫌い。東北の連中――仲間にした。でも違う。
なんだ仲間なんていないじゃん、そう気づいた
あんたの妹にも会った
だからさあ、あんたらを布理冥尊に誘った
ミカヅキは復活する？
ﾖｲｼｮ
夢月さあ、獲物の気配はさあ、あんたより虎のが感じとる。強敵の気配もさあ、あんたよりカラスのが感じとる。
観察というかさあ見物させてもらうよ
……。
……。
……！
ぎゃおす！ あんたはカラスだよな。なんでおります！
レアシルバーが腰を抜かすほどにびびっていやがる。
俺と夢月じゃなく焼石に。
だからさあ見ているだけ。邪魔しないよ
スカシバレッドが痛む胸を押さえながら、紅月を引っ張れ――ない。
なんで？
さもないと私は逃げます
レオちゃんがいるとかき消されちゃうけどな
ﾁﾗ
カラスは生身でまだおるけど、ぼおっと座ってる。カニとたわむれとる。大丈夫ちゃうかな
ｷﾞｭｯ
あんただけは特別だ
スカシバはこの次や、もう少し待っていろ。五人を倒したから五発ずつだ。
……俺の特性に引っかかるのに悪い奴はおらん。そう思ってた
タガメさあ、ちょっといい。
スカカスレッドのこと、本部から聞いてない？
サント号！
焼石でなく柚香に救いを求める――姫が望むならば。
それが建前だろうと、目覚めても弱いままの俺は姫を守るために、心に雪月花を思う。拘束された手になにも現れない。
スカっちはどうする？
レアシルバーがサント号に乗る。
俺たち二人をつかんだまま円盤が浮上する。
俺は心に雪月花を思う。現れない。なおも雪月花を思う。現れない。
バタバタ
やだ、やだ
バタバタバタバタ夢月は制服姿で足をばたつかせるだけ。
サント号はやけにゆっくりと海原上を進む。
カラスはほおっておく
ﾁﾗ
レオは護衛か？
もはや何もできない俺を。
ならば強くて弱いお姫様を守るために、頼れる人を思え！
