16 男子会で知る真実
文字数 3,610文字
とにかく一般人の記憶を消すのは一度が限界だそうだ。二度かけると脳に障害が起きるでは、連れていけるはずがない。ちなみに布理冥尊の洗脳も不可能になるらしい。桧が悪の手下に堕ちる心配もなくなったって、この子はむしろ善だ。
また夢を見たのかな?
俺は猫を膝に乗せて妹の手を握り、片手で朝食をいただく。
桧の手の感触は昨夜の三人のいずれとも違う。そりゃ今の俺はゴツくてデカい男の手だけど、これかもなとヒントを得たような。
今日もシフトは町田さんだった。病室の前で椅子に座って読書している。
若い女性は室内にいないと言うので、マスクとサングラスをはずす。緊張しながらドアを叩く。
今日の隼斗はベッドに腰かけていた。折り畳み椅子に座る好対照の男性二人と向かいあっていた。
握手を求められる。
女のときのイメージそのままじゃないか!
清見さんは若く見えるから年齢分からない。本当はおいくつですか? 二十二歳だよ。昔から落ち着いているから年寄りに見られるんだ。冗談やめてくださいよー。だったら私テイクアウトされちゃいますよー。我慢できない、今すぐ私をイートインして。
同じ男としてこれはずるい。フェロモンなど必要なく、二十年間女にもてまくりなおも進行中のタイプだ。
その横で、やはり180センチほどの角刈り男がそわそわしている。横にもがっしりした体格でTシャツの腕は剛毛だけど……。
ベットを枕側にずれて、言葉を選べぬ俺の席を開ける。はにかんだように手をだしてくる。
三人の男とも手を握りあえた。
私の報酬はおそらく“知性”だ。
私は千葉県内の国立大学工学部の四年生だが、夜の自習時間が明らかに減ったのに、成績は半比例した。苦手だった教授の覚えもよくなり、卒論に向けて自信がついてきた。
就職活動はせずに院に進む予定だ。ペナルティの影響も努力で補いそこまでではない。
正義を守ることで、学業からちょっと逃げているかもしれないけどな
……私の報酬は相生さんと逆というか……“女性ホルモン”です。
いっときは体毛も薄くなり、お肌もツルツルになりました。今はこんな体に戻っちゃいましたけど
茜音さんの報酬は僕に似ているけど、“コンディション”。
生理が軽くなったりお通じがよくなったりだけだけど、今日まで戦っていないから仕方ないよね。
逆に碧菜さんは、チームの全責任を背負っているからすごい報酬。
とてつもなき“金運財運”。
広尾の低層マンションに住んでいて、運転手付きの外車。僕の個室代とか未認可治療のお金もだしてくれる
私たちは全身を黒く覆った男たちに囲まれていた。
私も女性の姿になっていることに気づいた。パニックではない。ただ茫然としていた。じきに男たちに押し倒された。
そして真打ちが召集された。
レッドは登場するなり、戦闘員を真紅の剣、すなわち
彼女の奮迅な戦いぶりは私たちをも奮い立たせた。人がおぞましき異形と化しても、レッドは怯えずに立ち向かった。そして私たち五人で消滅させた。
モスガールジャーの初代レッドの名はヤマユレッド。燃えるような毛をたなびかせて敵をなで斬る、戦いの女神の具現だった。
あの団体を成敗し正体を明かす戦いに、モスガールジャーは新参チームだった。しかし破竹の勢いで敵を倒し、その名を関東どころか日本中に
自分たちよりレベルの高い単体と戦うリスクを算出する式だと、まずチームのレベルを合計したものを半分に割る。それだと我々の数値はほぼ140だ。これにもっともレベルの強い者から割りだす指数をかければ、花の単体レベルに拮抗する。つまり花と雪一人を相手ならば、五人で力を合わせれば十二分に勝てる可能性があった。
モスガールジャーはBランクとなり、雪月花に続くチームとなった。
しかし今年の桜が終わるころ、ヤマユレッドはチームを去った。赦せざる存在である邪教集団へと身も心も捧げてしまった。
ヤマユレッドがいなくなり最初の戦いで、私たちは全滅と言うものを経験した。レベルが半減した。そして負のスパイラルが始まり、ペナルティでレベルははく奪され続け、こっちの世界でも報酬は強制返還となった。しかし、その原因は私たちが闇落ちしたレッドに依存していたからだ。おのれらの精進を
モネマグリーンとは、毒蛾の学名から名付けられました。柿の木とかで触ってみなよとアピールしている、蛍光緑の毛虫の親です。
グリーンの本名は
戦いにおいてもアグレッシブで、強くないまでも勇敢に戦い、悪を許さぬ心も強く、レベルはレッドに次いで多かったです。
……レッドがいなくなったチームを、紗助君は率先して導こうとしました。それが災いして、あの子は三回連続で死亡しました。……紗助君の報酬は“喜び”。ピークの頃の彼には、物質的ではないささやかな幸せが、木漏れ日のように注いでくれたそうです。でもペナルティのために逆転して、彼の日常は悲しみと苦しみの影に支配されるようになりました。
彼は戦いでも怯えるようになりました。些細な傷でパニックを起こし戦場から逃亡しようとしました。
……ついに招集されても現れなくなりました。
そして五月の頭に事件を起こしました。