02 俺がレッドを守る
文字数 2,618文字
冷静に思いかえそう。
俺は相生智太という二十歳の男で間違いないよな。親友も彼女もいない、練馬区の実家から通う地味大学生だったよな。
それが何故空を飛び、穴から顔をだした男に睨まれている? それより、
レゲエっぽい男が穴から抜けでて、金髪豊満姉ちゃんを引きずりだした。……髪の毛を握ってやがる。俺の胸から怒りの鼓動が聞こえた。
関わっては駄目だ。それよりもだ。
トンネラーの頭からドレッドヘアが無数に飛んできた。ドリル弾?
俺は慌てて避ける。……体の反応が半端ない。
こいつら弱すぎないか?
底辺呼ばわりされていたよな……。戦隊を名乗る以上は、特撮番組にでてくる正義の味方たちだと思うけど。
一方のトンネラーの両手がドリルに変わる。ベタだが怖い。
俺はこの子を抱えて逃げるべきだろうけど、美女二人が拉致されるならば見捨てるわけにはいかない。助けてあげた後のご褒美をちょっとだけ夢想して、トンネラーへと突撃する。
俺の腕に赤い
ドレッドドリルが数本飛んでくる。女の子を抱えたままでもたやすく避ける。
トンネラーに空中から飛び蹴りをする。
こいつの腕はドリルだった。太ももをかすめた。
俺も露わな服装であることを思いだす。こんな奴相手に無防備すぎる。空へと逃れる。
なんであろうとさすがに許せない。ドリルなど籠手で受けとめてやる!
着地してピンクを降ろす。駆ける俺とドリルまみれの男が交差する。
おえっぷ!!!
俺の絶叫が倉庫街に反響する。籠手が縦に割れて手の甲から落ちる。伏した背中を踏まれて口から唾液が拡散される。
トンネラーなどというふざけた
腕も脚も裂傷だらけ。無傷なのは顔だけ。そこだけ守ったから。
満身創痍な俺が微笑んでみせる。
女の子も不敵に笑いかえす。
街灯の明かりを辛うじて拾った水たまりに映るモノクロの子。ストレートなミドルヘアでアーモンドアイの女の子。この滅茶苦茶にかわいい子は俺だ。
強い目に変わった女の子をさざ波に消して立ちあがる。
俺は喧嘩だけは強い。つまりこの子も強い。
などと思ったら俺の手に刀が現れる。赤く燃えている。
鼻血を垂らしたピンクが憧れの目で見ている。イエローとブルーは大の字だ。
トンネラーが髪の毛ドリルを乱れ撃つ。ソードで叩き落とす。トンネラーが俺へと両手のドリルを向けて駆けだす。
俺が
だから俺はソードを両手で握る。
叫びながら迎え撃つ。体を半身にまわし対のドリルを華やかに
禿げたままのレゲエ男の悲鳴がコンテナを揺らす。
ここまできたらとどめだ! うずくまる背中へとソードを突き刺――
気づくと時計は0で止まっていた。花吹雪が画面を彩っている……。
気配を感じて空へ身構える。
俺の一撃を喰らったドリル男はまだ禿げあがった頭のままで、俺たちにケツを向けていた。西に向かった半月を見ていた。
対のプロペラを廻しながら静止する黒色の機体に、俺も最後に乗りこみながら見る。
月を背景に人のシルエットが三体浮かんでいた。
スタイルで分かる。奴らも女だ。